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#02ビル新聞2018年6月18・25日合併号

対象を「1本つり」に限定
「安全帯」の呼称を「墜落制止用器具」に変更

-原則はフルハーネス型-

  

 労働政策審議会の安全衛生分科会は5月23日、墜落防止用個人用保護具に関する規制を見直す労働安全衛生法の政省令等の一部改正案要綱の諮問を受け、厚生労働大臣に「妥当」とする答申を行った。従来の「安全帯」を「墜落制止用器具」という呼称に変更し、対象を「一本つり」に限定。フルハーネス型を原則とし、特別教育を義務付ける。改正政省令等は平成31年2月1日から施行される(経過措置あり)。


 今回の改正は、昨年6月に厚生労働省の「墜落防止用の個人用保護具に関する規制のあり方に関する検討会」(座長=豊澤康男・労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所所長)がまとめた報告書を受けたもの。労働安全衛生法では施行令で定める機械等について、厚生労働大臣が定める規格や安全装置を備えていないものの使用等を禁じており、その一つとして「安全帯(墜落による危険を防止するためのものに限る)」(施行令第13条第3項第28号)を定めている。この規定を「墜落制止用器具」に改める。これにより、従来の「安全帯」(セーフティベルト)という呼称は廃止される。


 「墜落制止用器具」(フォールアレストシステム)は着用者の身体を肩、腿など複数個所で支持する構造の「フルハーネス型」を原則とするが、「フルハーネス型」だと墜落時に地面に激突するおそれがある高さでの作業の場合に限り「胴ベルト型」の使用を認める。電柱での作業などで使用される「U字つり胴ベルト」は、ロープの張力により労働者の身体を作業箇所に保持する「ワークポジショニング用器具」と位置づけ、使用する際はバックアップとして墜落制止用器具を併用し なければならない。「命綱」は労働者が墜落する危険のある箇所に到達することを制止する「レストレイント用保護具」と位置づけ、現行通りの扱いとする。


 省令改正では労働安全衛生規則、ボイラー則、クレーン則、ゴンドラ則、酸欠則の規定のうち、安全帯を労働者に使用させることを事業者に義務付けている規定とその関係規定、作業主任者等に使用状況の監視や機能の点検等を義務付けている規定について、「安全帯」を「墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具(要求性能墜落制止用器具)」に改め、作業内容や作業箇所の高さ等に応じた性能を有する要求性能墜落制止用器具を使わせることを事業者に義務付ける。


 また特別教育の対象業務に「高さが2m以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、墜落制止用器具のうちフルハーネス型のものを用いて行う作業に係る業務」を追加。ただしロープ高所作業は既に特別教育が義務付けられていることから、新たな特別教育の対象とはならない。


34年8月まで経過措置

  

 墜落制止用器具の規格については、「安全帯の規格」を全面改正した「墜落制止用器具の規格」(告示)に規定する。新規格は原則としてISO規格(ISO10333)に合わせるが、一部は日本人の体格などを踏まえた独自の基準を設定。規定は可能な限り性能要件化する。また新規格は「一本つり」関連機器に限定し「U字つり」や「グリップ」「伸縮調整器」などの一本つり以外の機器は規定しない。


 胴ベルト型の使用を認める高さは、最大落下距離4mとショックアブソーバの伸び1.75mの合計値に1mを加えた「6.75m以下」を最低限の基準とし、ガイドラインで作業容等に応じた適切な高さを示す。胴ベルト型が満たすべき性能は、墜落時の衝撃荷重4kN(キロ・ニュートン)以下、ランヤードの長さ1.7m以下などとする。


 改正政省令等は平成31年2月1日から施行する。ただし新規格に適合しない安全帯の製造は31年8月1日、譲渡・貸与・使用は34年8月1日まで可能とする経過措置を設ける。


 改正案を審議した分科会では、新規格に適合するフルハーネス型墜落制止用器具の購入に対して支援を求める意見が出され、事務局から前向きに検討する旨の答弁があった。

    

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