ビルメンテナンス業には、順守べきさまざまな法律・制度があります。これらに基づき、実施にあたっては資格の取得が必要な業務もあります。
専門的な知識や技術をもった資格者がその能力を存分に活かし、日々、建築物の快適な環境をつくっています。
法律・制度と資格の関係
ビルメンテナンス業に関する主要な法律や制度と資格は、下図のように表すことができます。
職業能力促進法と技能検定制度
職業能力開発促進法に基づき実施される技能検定制度は、技能に対する社会一般の評価を高め、働く人々の技能と地位の向上を図ることを目的に、働く人々の有する技能を一定の基準により検定し、国として証明する制度で、合格者には技能士の称号が与えられます。
ビルメンテナンス関係の技能検定には、昭和57年に検定職種となった「ビルクリーニング技能検定」と、平成8年に検定職種に追加された「ビル設備管理技能検定」があります。
ビルメンテナンス業務は、ビルメンテナンス企業の従事者がそれぞれの建築物で作業し提供する商品です。言い換えれば、ビルメンテナンス業務の品質は作業する従事者のスキルにより大きく左右します。国が証明する技能を有した技能士が、高品質なサービスを提供しています。
・ビルクリーニング技能士の詳細は、こちら
・ビル設備管理技能士の詳細は、こちら
設備管理業務の関係資格
設備管理業務には、対象となる設備機器等によりさまざまな資格制度があります。それら資格制度の多くは、その設備の運転や保守管理を行うために、ビルの所有者が選任しなければならない技術者の資格として定められています。
ビルメンテナンス企業は、ビルの所有者に代わってこれらの資格者を多く雇用し、それぞれの建築物で役割を担っています。
・電気主任技術者
・電気工事士
・電気通信主任技術者
・エネルギー管理士
・工事担任者
・電気工事施工管理技士
・ボイラー技士
・ボイラー整備士
・ボイラー据付工事作業主任者
・ボイラー・タービン主任技術者
・冷凍機械責任者
・冷凍空気調和機器施工技能士
・浄化槽管理士
・浄化槽技術管理者
・消防設備士
・消防設備点検資格者
・危険物取扱者
・昇降機検査資格者
・高圧ガス製造保安責任者
・建築設備検査資格者
・特殊建築物等調査資格者
・建築・設備総合管理技術者
建築物清掃管理評価資格制度
清掃管理業務は、ビルメンテナンス企業の従事者がそれぞれの建築物で作業して提供する商品のため、商品(業務)の品質を高めるには、実施した「作業結果」や「業務管理体制」を点検し、業務改善に生かすとともに、必要に応じて建築物所有者の皆さまへ改善提案する「品質管理体制」が求められます。
このような「清掃管理業務の作業結果や業務管理体制を評価・改善できる専門技術者」として、全国ビルメンテナンス協会が育成しているのが「建築物清掃管理評価資格者(通称:ビルクリーニング品質インスペクター)」です。
建築物の所有者や利用者の目線で、それぞれの建築物に最も適した清掃管理業務を考え、提案する。インスペクターは毎日、昨日より良い建築物環境を目指して活動しています。
・建築物清掃管理評価資格者(インスペクター)の詳細は、こちら
建築物衛生法の事業登録制度
多くの方が利用する建築物の衛生的環境の確保を目的として、昭和45年に制定された「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)」。この法律では、資格者の配置や従事者研修の実施など一定の基準を満たしていることを証明する「都道府県知事登録制度」があり、多くのビルメンテンス企業が登録しています。
登録業種は全部で8業種あり、登録しているビルメンテナンス企業は、基準を満たした高品質なサービスを提供を提供しています。
・1号:建築物清掃業
・2号:建築物空気環境測定業
・3号:建築物空気調和用ダクト清掃業
・4号:建築物飲料水水質検査業
・5号:建築物飲料水貯水槽清掃業
・6号:建築物排水管清掃業
・7号:建築物ねずみ昆虫等防除業
・8号:建築物環境衛生総合管理業
・建築物衛生法の登録制度の詳細は、こちら
エコチューニング認定事業者
政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。ビルから排出される温室効果ガスの削減にも、大きな期待が寄せられています。
ビルに既設の設備機器の運用改善(エネルギー利用のムダを省く)ことで温室効果ガス削減と省エネルギーを実現するのが、環境省の「エコチューニング」です。設備投資が不要で「ムダを省く」ために確立された366の技術をもって、「暑い・寒い・暗い」といったガマンもなく、ビルの生産性や快適性はそのままに、温室効果ガス削減と省エネルギーを実現する手法です。
これを担う「エコチューニング認定事業者」が、ビル所有者に代わって脱炭素に貢献します。エコチューニングを導入しているビルは、SDGsの「7 エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」や「12 つくる責任、つかう責任」、「13 気候変動に具体的な対策を」などに取り組んでいることの証左にもなります。
・エコチューニングの詳細は、こちら
医療法と医療関連サービスマーク制度
近年では、病院の約80%が清掃業務を外部委託しています。
医療法では、病院や診療所等が患者の入院などに著しい影響を与える業務を8業種に分類し、これらを外部に委託する際には「基準に適合するものに委託しなければならない」と定めており、病院の清掃もその1つとして規定されています。
(一財)医療関連サービス振興会の「医療関連サービスマーク」は、清掃を行う事業者が医療法の定める基準に適合しているかを認定する第三者評価の制度です。サービスマーク取得企業は、基準を満たした高品質なサービスを提供しています。
・医療関連サービスマークの詳細は、(一財)医療関連サービス振興会