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陶芸の器を作るように、ベッドをメイクする。 

2021/12/20 09:00

清掃人。 第二十二回

竹村真理(19歳) 株式会社グローバルゲイツ

2021.10.28 12:00 更新

撮影=立木義浩 文=内野一郎
撮影場所=東京都江東区内ホテル

ベッドメイク。
読んで字の如く直訳をすれば
「ベッドを作る(整える)」
ということになるだろう。
しかし起きて半畳寝て一畳、
枕一つに掛け布団。
そんな空間で毎日、
押し入れに布団を上げ下げしてきた
日本人にとって、
インテリアでもあるベッドの寝具を
美しく仕上げるメイキングの会得は、
実は相当に難しい技術なのではないかと
内心ひそかに想像していた。
ところがその難術について
高級高層ホテルのスイートルームで
19歳の竹村真理さんに問うと、
「たとえば陶芸の器を作るような感覚」
「ベッドメイクは作品」と
いともたやすく爽やかに答えてくれたのだった。
そしてベッドメイクは
「ハウスキーパーの花形」業務なのだと
屈託なく彼女は微笑んだ。
この仕事の大変なところは?
と、重ねて尋ねてみると、
「掃除した部屋には
髪の毛一本落ちていてもいけません。
その極度の緊張と
細心の注意力を維持しながら、
お客さまの笑顔を創るために
綺麗な部屋を仕上げていくことです」
快適さ、心地良さの良否によって、
ホテルの評価は大きく分かれる。
するとそれを生み出すホテルのハウスキーピング、
そしてベッドメイクこそは
ホテルの存在価値そのものと言えるかもしれない。
この若き清掃のマエストロと出合い、
そう考えさせられた。

立木義浩(たつき・よしひろ)/1937年、徳島県・徳島市の写真館に生まれる。1965年『カメラ毎日』で掲載された『舌出し天使』が話題となり、一躍世間の注目を集める。女性写真の分野を中心に、多く著名人を撮影。 同時に世界中でスナップ写真を日常的に撮り続け、多くの作品を世に送り出す。主な受賞歴に、日本写真批評家協会新人賞(1965年)、日本写真協会賞年度賞(1997年)、 日本写真協会賞作家賞(2010年)、文化庁長官表彰(2014年)など。