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ビルメンテナンスに誇りを持ち、地元に貢献する企業をめざす

2024/07/18 11:00

 

企業経営、協会活動の両面に全力で取り組む。

―――まず、会社の現状を教えてください。

多田 来年当社は50周年を迎えます。これまでの道のりを考えると決して楽ではなかったです。

―――具体的には、どのようなことがありましたか?

多田 最近では、コロナ禍は大変でした。巷では、業績などには何の問題がないにもかかわらず、経営者自身の気力の減退により、あきらめに近い休業や廃業などもあったと思います。当社もどのように会社を守るか、存続させていくかは随分と悩みました。
人の移動や企業活動の制限といったコロナ禍に特有の制約が重くのしかかりました。

―――確かに当時はいろいろな制限がありましたが、どのように活動されたのですか?

多田 とにかく、お客様との信頼関係をいかに維持させるかを特に心がけました。やはり、お客様も多種多様です。いろいろな現実を抱えています。残念ながら、コロナ過で持ちこたえられなかった取引先もありました。でも、継続しようとか、ここを持ちこたえて新たな未来を創っていこうというお客様もたくさんいらっしゃいました。そういったお客様との関係を維持しなければいけないという強い想いがありました。

―――現在の状況はどのようにお考えですか?

多田 新型コロナウイルスは季節性インフルエンザと同様の「5類」に引き下げられました。このことは企業活動に大きな影響を与えたと思っています。何より、人の活動、往来が戻ってきました。何といってもビルメンテナンスは都市型産業です。人がいない、経済活動が停滞している時には動かないのです。それが、大きく変わりました。札幌の街を歩いても人の多さを実感します。何より日常が戻りつつあるということは感じています。
一方で、コロナ禍が明けた後の「新たな働き方」に関する、企業としての在り方、働いている従業員の健康保持は強く意識しています。

―――話題は変わりますが、多田さんは北海道協会の副会長というお立場です。協会活動にはどのように取り組まれていますか?

多田 企業経営とは分けて考えるようにしています。協会とは、事業目的のためにみんなで協力し合って達成させていく団体と理解しています。
目的とは理念であると考えています。では理念とは何か? ひとつは協会の考えている業界の姿、理想像を描くことです。従ってビルメンテナンス業界をどのようにけん引していくか、協会に加盟している企業がいかに地元で活きることができるか、理想とする社会はどんな世界なのか、その描く思いをカタチにする団体だと考えています。

―――壮大なイメージですね。確かに理念と理想をカタチにしていかないと将来の展望は難しいと思います。

多田 ひと言で表せば、協会は会社と違って利益の追求を優先するものではないと考えています。一般社団であっても公益社団であっても、その求める姿に大きな差はないはずです。いかに社会要請に応えていくことができるかが大事です。

―――具体的には、どのようなことを念頭において協会事業を進めておられますか?

多田 私が協会事業を進めるということは、気持ちの意味でも実際の活動においてもありません。会員のそれぞれがその役割に応じて協力しているという現実をサポートすることが今の立場だと思っています。もちろん入札制度の改善であるとか、業界のあり方や今後の会員の企業活動が円滑に進まないと思われる障壁等は取り除いていかなければいけないと考えており、そのような取り組みは今の立場を考えて主導的に行っています。しかし「主導的に行う」にしても、委員会での検討や会員の声などは大事にしています。

―――今回、全国協会の活動にも専門委員としてご参加いただきました。その動機はどのようなことがありましたか?

多田 国が進める「物価上昇を乗り越える構造的な賃上げ」を実現するために、ビルメンテナンス業界の自主行動計画を作るので参加して欲しいと、北海道協会の前会長である岡田さんから強い要請がありました(笑)。
もちろん、私自身も構造的な賃上げを実現するために企業として何が必要なのかはずっと考えていたことでした。それぞれの企業で交渉にあたっても、できることには限界があります。その支援を全国協会が考え、道筋をつけていくということは大事だと思いました。
人が財産であるビルメンテナンス業では、現場で汗を流す従業員にこそ、十分な賃金と安心して働ける環境を提供することが何より重要であるはずです。そのためには自らが行動を起こす必要があると考えて、参加を決意しました。

―――確かに、策定した「ビルメンテナンス業における価格転嫁に向けた自主行動計画」にはそのような考えが盛り込まれています。

多田 自主行動計画の目的にも記載されていますが、私たちも行政に頼るばかりではなく、企業自らが発注者と交渉し、仕事に理解を深めてもらい、相応の対価を得るための行動を起こすことが必要です。雇用条件の改善が期待できないと、特に若年者の確保が難しくなり、高齢者に長時間労働をお願いせざるを得なくなります。それが労働災害が減少しない一因ではないかと感じています。こうした厳しい状況を打開するためにも、企業が行動することが大事です。
自主行動計画は「作って終わり」ではなく、これに基づいて各企業が活動していくことが何より大切です。計画の策定に携わった者として、企業の価格交渉への取り組みがどう変わったか、行動した結果がどうであったか、成果はあったのかなども総括し、次につなげていくことを考えています。

―――もう一度、会社の経営にお話を戻したいと思います。現在まで、どのようなことがありましたか?

多田 経営者は、一人では結論を出すことが困難な状況であっても最終的には一人で責任を負い、判断を下さねばなりません。経営が順調であれば問題はありませんが、経営が厳しいと毎日孤独な決断を迫られます。やはり全ての現場の状況を把握し、会社の実情がどこにあるのかを理解するまでにかなりの時間を要しました。
会社を引き継いだ際から感じていることではありますが、マラソンに例えるならゴールがあるから頑張れると言います。しかし経営者は、事業を永続させることが使命のため、終わりなきゴールを目指さねばならない苦しさがあります。

―――企業を継がれた時の悩み、葛藤のようなものはありましたか

多田 悩みとか葛藤いったものは考えたことがありません。目の前の現実と将来のあるべき姿を考えることが大事だと思います。経営者は最終決断をして、その決断に対する全ての責任を負わなければなりません。経営をしていく上での課題は、企業が成長する過程で直面する問題を含んでいます。自社の経営課題を分析し、適切な課題解決策を考えることが重要です。ビルメンテナンスの場合は、発注者の多種多様な要望・要求に応えつつ、課題を解決するのは本当に苦労があります。

―――最後に、今後の活動と将来に向けた理想をお聞かせください。

多田 申し上げたとおり、多種多様な要望にいかに向き合うかが大事だと思います。問題解決後に実現したい姿、目指すべき姿を明確にする必要があるでしょう。私自身が営業マンであると自覚しています。私が顧客を訪問し、いろいろなことを伺い、その中から判断していき、管理職と共有し、現場ベースに当てはめています。
やはり、コミュニケーションは大事だと痛感しています。社員がいて、その働きを理解していくことが大事だと思います。そういった自社のあるべき姿を知ることは、現状とのギャップを知り、次に進むべき必要な要素を特定するのに役立ちます。そういったことを包含しながら、当社でないとできない、三和美建工業に任せてみようと言ってくれる「お得意さま」を増やして、強固な信頼していただける関係を築いていきたいと思います。