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人手不足の今だからこそ、従業員の定着と新技術の活用を

2024/09/17 10:00

人手不足の時代。積極的に新技術の活用を。

―――陽光ビルサービス株式会社について教えてください。

新本 陽光ビルサービスは昭和32年(1957年)に創業し、現在67年目を迎えています。創業者である私の祖父が、仙台の石井硝子という会社から窓ガラスを磨いて収める部門を買い取ったのが始まりです。その後、昭和37年(1962年)に総合ビルメンテナンス業へと事業を拡大し、現在1000名以上の従業員と共に歩んでいます。

―――会社の事業内容について教えてください。

新本 主にビルメンテナンス業務、マンション管理、並びに警備事業を行っております。20年ほど前からは建物のリニューアル事業も行っています。仙台や東北地方だけではなく首都圏への事業展開も行っています。常に新しいことを取り入れることが重要だと考えており、ここ3~4年はロボットやデジタル技術の活用を会社として促進しています。特に最近は建物のリニューアル事業に力を入れております。原状回復工事だけでなく、付加価値として建物の内装デザインや設計なども手がけており、弊社の強みでもあります。リニューアル事業は今後さらに需要が増えていくと考えています。

―――新本社長の経歴を教えてください。

新本 学生時代にホームステイをした経験から海外でもっと学んでみたいと思い、大学卒業後2年間カナダに留学しました。帰国後は、東京で国際航空貨物の手配をする仕事をしました。
その後、陽光ビルサービスに入社し、ビルの現場、マンション管理、営業など様々な部署を経験しました。

全く違う職種からビルメンテナンス業界に入って感じたことは、当時は請負契約に基づいた仕事が多かったので、どうしても仕事のスタンスが受け身になってしまう印象を受けました。早朝などの時間的な制約がある作業や、トラブルなどの突発的な問題に対応することが求められます。しかしその対応のひとつひとつの積み重ねがお客様との信頼関係に繋がることを徐々に実感しました。

役員になってから10年になりますが、一通りの部署を経験したうえで経営に携われていることは大変良かったと感じています。当時の経験から現場の従業員の方々と経営層でのギャップがあることも理解しているので、そのギャップを埋めるために日々様々なことに取り組んでいます。

―――会社が直面している課題はありますか?

新本 やはり最大の課題は人手不足ですね。ビルメンテナンス業界に関わらず、日本は2040年には労働需要と供給のギャップが1100万人にも達すると言われています。仙台は東京への人材流出が特に多い都市の一つです。ただ、最近はうれしいことに地元志向の若者も増えてきております。首都圏出身の社員が仙台の魅力に気づき、ここに残りたいと言ってくれるケースも出てきています。陽光ビルサービスが仙台の魅力のひとつとなり、社員の定着に繋がればと思っております。

―――会社の魅力とは?

新本 当社で働いてくれている社員のみなさんの成長が会社の発展に直結します。人手不足の今だからこそ、ロボットやDXなどの新しいこと・革新的なことへ積極的に取り組むだけではなく、社員の教育・技術向上にも力を入れております。ビルメンテナンス業界の変革期において、日々新しいことに挑戦できる環境、それが弊社の魅力だと思っています。

つい最近は若手社員が中心となり自主的にインスタグラムを開始したいと言ってくれました。こういった社員からの提案があると嬉しく思います。

https://www.instagram.com/yokobuilding

また、おかげさまで弊社は新卒社員に関し、非常に高い定着率を誇っています。一般的に、サービス業では新卒入社後3年以内に約46%が退職すると言われていますが、当社では約9割の新入社員が定着しています。

それでも人手不足は大きな課題です。仕事の魅力を伝えることで、当社に関心を持ってもらえるように私自身、努力を続けていきたいと思います。

―――やはり人手不足は課題ですよね。人手不足対策で行っていることはありますか?

新本 清掃・警備ロボットの導入による人工削減、デジタル技術によるデータ活用やシステム化による業務の効率化を進めています。例えば、警備ロボットを仙台空港に導入している実績があります。また、無人のビル管理システムの実験も行っています。

私が1番取り組まなければいけないと思っていることは、人手不足を乗り切るためのマネジメントです。従来の労働集約型のビジネスモデルから脱却し、人とロボット・デジタル技術のハイブリッドモデルを目指しています。ただし、東京の大規模ビルとは異なり、地方の実情に合わせた規模のロボットやシステムを選択する必要があります。

もう一つ、従来の時間単位の仕様発注型の契約から性能発注型の契約への移行を押し進めていきたいと思っています。例えば早朝などの時間的な制約のある現場が多いのが現状であり、求人ではこの時間的制約は大きな壁になります。

今後さらに人手不足が深刻化していくなかで、少しずつ壁を崩していきたいと思っています。

重要なのは従業員全員が同じ方向を向いて進むこと。

―――他にどのような取り組みをしていますか?

新本 社員教育に力を入れています。新入社員には営業部門や清掃現場など、1年間で様々な部署を経験させるジョブローテーションも含めた社内大学制度を行っています。本人の希望も聞きつつ適性を見て配属先を決定することで、ミスマッチングが減っていると感じています。また、35歳以上の社員を対象にした、7か月かけて異業種で活躍をされている方々を招いて行う幹部育成のための「リーダーシップ育成塾」という研修を行っています。私がいろいろな場所で講演を聞いて感銘を受けた講師をお招きすることも少なくありません。社員の方々と同じ考え方やトレンドを共有できればと思っています。若手向けには、将来のビジョンを描くための機会を提供したいということで「ワークライフプラン形成塾」も別途設けています。このように年齢や役職に応じた教育プログラムを実施しています。もちろん、必要な資格取得も奨励しています。

―――社内コンテストがあるとお聞きしました。

新本 毎年10月頃に社内コンテストを開催しています。技術と提案力を競う場で、お客様への営業提案、設備技術、清掃技術などさまざまな種目があります。例えば、トイレの清掃やビルクリーニングの技術を競ったり、不具合の発見能力を競ったりします。

―――コンテストの目的は何ですか?

新本 社員の成長を可視化し、モチベーションを高めることです。ビルメンテナンスは日々の業務では成長を感じにくい職種だと考えています。日々の成長、仕事に対しての頑張りをコンテストという場で実感できます。また、若手社員の育成や、マネジメント能力の向上にも役立てています。優勝者には栄誉で酬いたいと思い、賞品なども用意していますので、コンテストをひとつの目標にして頑張って欲しいです。

―――最近リニューアルした研修施設について教えてください。

新本 法定研修だけでなく、品質向上や新サービス開発のための研修もできる施設を作りたいという思いで、今年の7月に研修施設を自社のリニューアル事業部の技術を結集して改装しました。施設内には最新の清掃設備や、環境に配慮した床材などを導入し、社員が実践的に学べる環境を整えました。

また、研修設備だけではなく24時間365日稼働のセキュリティセンターとコールセンター等も備えた総合施設になっています。様々な用途や目的を一から想定してリニューアルしたという事で、事業部としても大きな経験となりました。

リニューアルした研修センター(入口)
トイレブース
設備ブース
病室ブース
清掃資機材の展示
24時間365日稼働のセキュリティーセンター・コールセンター

―――トイレ・病室・設備など、各ブースが充実していて、かつ最新設備を導入しているので実践的に研修できますね!

新本 社内研修だけではなく、協力会社の社員の方の研修にも使っていただいたり、資機材等のメーカーによる商品説明会も実施しています。今後は、お客様にサービスのデモンストレーションを行うなど、自社のPRや営業活動にも活用していこうと思います。

―――会社のオフィス環境はどのようになっていますか?

新本 オープンなレイアウトを採用し、コミュニケーションを促進する設計になっています。

以前は部署ごとに固定席があったのですが、約2年半前に一部役員と個人情報を扱う事務員以外は全てフリーアドレス制に変更しました。理由として、部署間のコミュニケーションが活発になり、新しいアイデアが生まれることを期待しているからです。それに伴いペーパーレス化を進め、デジタル化にも取り組んでいます。

また、このオフィス内には様々な仕掛けがあります。例えば応接室のブラインドは弊社が取り入れている採光と遮熱機能のあるブラインドです。お客様とお話をしながら商品のPRもできます。他にもオフィスの様子を直接見ていただくことでオープンなレイアウトをイメージしていただき、リニューアル事業に結び付けています。

フリーアドレス制のデスク
オンライン会議などで使用する遮音スペース
オフィスの上の階には食事をとれる休憩スペース 大きなプロジェクターがありセミナー等も行われる
ランチミーティングも行えるスペース

―――社長として心がけていることはありますか?

新本 社員が働きやすい環境、成長しやすい環境を作ること。そして社員とのコミュニケーションを一番に心がけた上で、経営者として会社の方向付けを示し、社員に伝えることです。私からの発信のみの一方通行にならないように心がけていまして、社長に就任した2022年以降、年2回、タウンホールミーティングを実施し、直接社員と対話する機会を設けています。一方的に会社の方針を伝えるだけでなく、社員の声に耳を傾けることを大切にしていますし、現場の方々には会社の方向性を理解し、共感していただきたいです。また、総務部の者も自発的に、月に1度の全体朝礼で私が話したメッセージを動画で見られるようにしてくれるなど、私はだいぶ助けられています。

ここ何年かはロボットやデジタルの導入に対して抵抗がある方も多くいました。頭ごなしに導入を決定して現場で使うように命令してもうまく使えるはずもありません。ロボットを使用していく意図を共有し、理解してもらうことで活用が進んできたと思います。

今後も会社がどこに向かっているのか、何を目指しているのかを共有することで、一体感を醸成して、社員と一緒に陽光ビルサービスが大きく育っていければと思っています。

経済産業省から「地域未来牽引企業」にも選定されている