

【生産性向上の支援・情報提供】第6弾 <建物オーナーが求める施設管理システムを開発!~グループ企業の強みが活かされた一元管理システム~>
第6弾 建物オーナーが求める施設管理システムを開発!
~グループ企業の強みが活かされた一元管理システム~
全国のPARCOの清掃・警備・設備管理・インフォメーションなどの総合的な施設管理事業と、店舗やテナントの内装や施工などの空間創造事業の二つの事業を行う株式会社パルコスペースシステムズ。
同社は、建物情報のデータベース化と一元管理によって効率的な施設管理を実現する施設管理プラットフォーム「⁺BISION」を開発した。パルコグループの全国の商業施設で活用されているほか、2025年3月からは外部向けにもサービス提供を開始した。
今回の生産性向上のポイント |
以下の生産性向上に資するメリットを享受
施設管理プラットフォームの導入によって
◆ 現場に散在していた必要情報が一元管理化
◆ システム導入で1人の管理者が担当する拠点数1か所 → 2か所に
◆ スタッフ同士のスケジュールの見える化によりコミュニケーションがよりスムーズに
◆◇◆
インタビュー
(左から)
事業戦略部 デジタル戦略課 課長 森川隆賢氏(以下、森川)
事業戦略部 部長 石井洋輔氏(以下、石井)
事業戦略部 デジタル戦略課 リーダー 高山和則氏(以下、高山)

“まるで謎解きのよう” 必要な情報を誰が知っていて図面がどこにあるのか……アナログ管理だった過去
―― 長年の課題感から今回のシステム開発に至ったと伺いましたが、どのような課題があったのでしょうか。
森川 以前は「情報の一元管理」というのが本当に課題でした。商業施設内のトイレの詰まりや、テナントさんの厨房の水が出ないとか、水漏れ、停電などの設備管理だけでなく、ケガや急病人、万引きの対応など、我々の対応範囲は多岐にわたります。
日々めまぐるしく何かが起こる中で、情報の管理はかなりアナログでした。ノートに書いて共有するとか、付箋に書いて貼っておくとか、ホワイトボードにマグネットで貼っておくとか。月間の予定やその日に起こったことなども、大きなホワイトボードに書いていて、次の月になったら全部消しちゃってたんです。本当はそこにこそ重要な情報があるはずなのに、情報が蓄積できずに、もったいない状況でした。
「必要な図面がどこにあるのか探せない」ということもよくありました。その建物にスタッフが10人いたら、在り処を知っているのは3人くらいで、しかもそのしまってある場所はかなりマニアックな場所だったり……。さらに、詳しいスタッフが休みのときは、電話をかけて教えてもらったりして。現場で必要な情報がとにかくバラバラだったんです。
―― かなりアナログな管理だったのですね。他にも課題はありましたか?
高山 もう一つの課題は「ベテランスタッフの技術やノウハウをどう継承していこうか」ということです。例えば、古い建物の天井から水漏れが発生した時にベテランスタッフに聞けば「10年前にどこどこの協力会社さんでこういう施工をしてるから、こう対策したらいいよ」とすぐに分かるんですが、その方が居ないとまったく分からないということもあって。そうなると、一からその漏水を調査して、ここが補修してあるな、じゃあどこに頼もうとか、非常に非効率なことが多発していました。なんだか謎解きのようなことが多かったんです。
情報の一元管理をやらなきゃという課題意識はありつつ、それでもなんとか回ってしまっていました。1つの建物の中に関わる人が100人程いるのですが、本来なら全員が同じレベルで知っておかなきゃいけないことは意外と大した量じゃなかったりするのですが、それができずに後回しになっていました。
今までは、人が大勢いたのでなんとかなっていましたが、少子高齢化で働ける人が今後もっと少なくなっていく中で、少人数で効率よく管理して、無駄をなくしていくことの必要性を痛感するようになりました。
森川 昔だったら、ドライバーと道具だけ持って「後ろについてきて覚えよ」というような職人気質の風土もあったのですが、それではこれからの若い働き手にフィットしませんよね。最低限の記録を残す、ベテランであろうが若手であろうが自分で情報を取りに行けばそこに情報があるという世界を作る必要があるということになりました。
世の中的に「変わらなきゃいけない時期」という危機感がプロジェクト発足の後押しに
―― “これまで後回しになっていた”ことに着手できたのには、なにかきっかけがあったのですか?
高山 ある時期から、人材の募集をかけても肌感で分かるくらいに人が集まらなくなりました。 そもそもこの業界はすごく人気があるとは言えないうえに、世の中的にも労働人口が減少していたり、働き方の変化が求められるようになりました。さらに新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、危機感が一気に高まりました。商業施設の施設管理事業はその現場に四六時中人がいるというのが基本なので、会社としても未来を見据えて事業を持続させ拡大させていくうえでは、「変わらなきゃいけない時期」という認識が高まり、現状の課題の解決が急務となりました。
そこで「未来プロジェクト」というデジタルの力を使って現状を変えていく戦略チームが社内で立ち上がりました。もともとは全員が現場の施設管理出身のチームなので、システム開発の経験はなく、右も左も分からない状態からのスタートでした。
―― みなさんシステム開発未経験のメンバーでの開発だったのですね! そんな中でどのようなことから始めましたか?
高山 まずは全国のパルコにヒアリングに行くことから始めました。直接現場の方々と会話をする中で、いわゆる「ムリ、ムラ、ムダ」が一番の課題であると改めて確認できました。プロジェクトメンバーはもともと現場にいた人間なので、現場の苦労はよく分かります。今はまったく機能していないけど昔作ったルールのままになってしまっていることなど、当時は気づかなかったことも、少し引いた視点で現場を見てみると効率化できる箇所がたくさん見えてきたのです。
システム開発以外の部分でも、たとえば「夜間作業の改修工事を最後まで立ち合う」ことも必ずしも必要じゃないんじゃないか、というように、先入観を疑ってみることで効率化できる部分を発見することもできました。
グループ企業だからこその強みが活かされた、建物オーナーに喜ばれる情報管理システムが誕生
―― ヒアリングで見えてきた課題が、どのように機能に活かされていますか?
高山 基本的な機能としては、①建物のスペックなどの基本情報や図面などの管理、②点検やメンテナンスなどの年間予定の管理、③設備機器のメーカーや型番、耐用年数などの情報の集約、④修繕計画の予定や予算の管理、⑤毎月の個人/全体のスケジュールやタスクの管理、⑥不具合、事件、事故等の記録の6つです。
正直、似たようなシステムはごまんとあるのですが「かゆいところに手が届く」「よく分かってるね」というお声をよくいただき、ありがたい限りです。現場に散らばっている情報を一元管理化することで、施設管理業務を効率化させたり生産性を向上させるのはもちろんですが、現場の生産性が向上することで、建物オーナーと迅速に管理情報が共有できたり、修繕計画や予防保全がしやすくなることでコスト管理を最適化できるなど、施設管理から建物の資産価値向上に貢献することができるツールとなっています。
―― なるほど、ビルメンテナンス業務の効率化だけでなく、オーナーさんにとっても役立つ情報が集まるツールなのですね。
森川 そうなんです。我々は、独立したビルメンテナンス会社ではなく、グループ企業なので「私たちは管理会社なのでここまでです」とばっちり線引きをすることなく、パルコとパルコスペースシステムズという関係性の中で「みんなでこの建物を守っていこう」というスタンスで鍛えられてきました。だからこそオーナーさんが何を求めているのかというのも、この「⁺BISION」には機能として散りばめています。そこが他社のシステムにはない我々の強みだと思っています。
ビルを長く持ち続けていくと修繕が必要になりますが、お金を出すのはオーナーさんでも計画するのはビルメンテナンス会社ということが多いと思います。情報を活用することで傾向と対策が立てられるので、オーナーが欲しがる情報を提供することができ、信頼を得られる一助になると思っています。
―― システム導入の効果としては、どのように感じられていますか?
高山 これまでは、1つの拠点に1人の責任者で管理することが基本でしたが、システムの導入後は、業務が効率化できたことで2つの拠点を1人の責任者で管理することができ始めています。またシステムの中で全国のパルコの他の物件の不具合なども閲覧できるようになっているので、他店の類似の履歴を検索して情報を共有することで、現場でのスムーズな対応ができたり、未然に事故を防いだり、ということもできるようになっています。
そして、以前よりも誰が何をやっているかが可視化されたことで、スムーズなコミュニケーションが取れるようになったという声も上がっています。
一筋縄ではいかなかった導入初期、デジタルへ導入への抵抗感には「とにかく丁寧に」
高山 今でこそ全国のパルコの施設管理ではこの「⁺BISION」のシステムを使うことが当たり前になっていますが、導入初期はまったく浸透しなかったという失敗談があります。当初はもっとたくさんの機能を欲張って詰め込んでいたのですが、トライアンドエラーを経てこの6つの基本機能に落ち着きました。
―― 開発だけでなく導入期にも課題があったのですね。全国のパルコに浸透するまでにはどのような苦労がありましたか?
高山 開発直後にプロトタイプ版を導入してもらったときは「こんなの使いもんにならねえよ!」とお叱りを受けました。でもその意見って本当に貴重で。プロトタイプ版の使用開始から約3年間、そういった声をもとにどんどんブラッシュアップを重ねていくうちに、気づいたら現場からの要望がどんどん少なくなっていって、それぞれの機能が形になっていったんです。
機能として固まった後も、すんなりと現場に浸透したわけではなく、全国のパルコの地域や建物の規模によって内部の運用はさまざまなので、「いやいや、よそではできてもうちではできないよ」ということも多々ありました。デジタルのもの自体に抵抗感を感じるとか、ベテランの方ほどこれまでのやり方を否定されたような気持ちになってしまったり、いろいろあると思うんですが、こちらとしてはとにかく丁寧に何度でも説明もするし、コンセプトを伝えて思いに共感してもらうことに注力しました。
―― 新しいツールや取り組みを社内に浸透させるにあたって、他社さんにも参考になりそうなポイントはありますか?
石井 他社さんともお話しする中で、やはり導入の部分が一番苦労するという話は本当によく聞きますね。我々の体験からなにか他社さんにお伝えできることがあるとするなら、ポイントは4つくらいかと思います。
一つは、これはあまり好ましくはないかもしれませんが、強制力。〇年〇月にはもう期限がきてしまうので新しいものしか使えませんとか。反感も出るかもしれませんが、結果にコミットするには一番かなと思います。あとは、社内の会議で社長の口から伝えてもらうこともしました。
二つ目は、少しずつスタートさせること。新しく始める項目を絞ってしまって、たとえば2つだけやってみましょう、という風に慣れてきたら増やしていくやり方です。
三つ目は、拠点を絞るということ。最初はどこかの拠点でトライアルとして始めて、そこのキーマンとの信頼関係を構築しながら、ある程度うまくいったらできる拠点を増やしていけると思います。
四つ目は、マネジメント層と現場とでレイヤーを分けた伝え方をしていくことも大切だと思います。マネジメント層の方には、会社の未来や先のことを踏まえて今これをやる必要があるという伝え方になるし、現場の方からすると机上の空論よりも、今日明日なにが楽になるのか、どんなメリットがあるのかということを伝える方が納得してもらいやすいです。
それぞれのアプローチで、本当に地道にやるしかないんですよね。いきなりガラッと変わりますということは難しいと思うので、全部を最初から100%を目指さなきゃと思わないことが大事かなと思います。
―― 新しい取り組みを始めるのはなかなか簡単なことではないと思いますが、背景にはどのような想いがあったのでしょうか。
高山 働き手は減っていくし、どうしたって建物は老朽化していくので、危機感というのが大きいです。今はまだこの業界も過渡期の中でも、猶予期間だと思うんです。この5年10年の中で一気に環境の変化が来ると考えています。その準備として、まさに今の時期を将来視点で有意義に使うという観点は、今まで以上にシビアに考える必要があると思っています。そして、アクションに結びつけること。行動として少なくても小さくてもいいから何か動くことが大事だなと思います。
―― 今後の「⁺BISION」の展望というのはなにかありますか?
森川 我々のグループ内の課題解決を目指して開発した製品ですが、他社さんへの提供も開始しましたので、できるだけたくさんの会社さまの業務効率化や生産性向上に役立てていけると嬉しいなと思います。導入フェーズでの失敗談や経験談もたくさん持っていますので、業界課題の解決のお役に立てると思っています。無料モニターの募集も始まっていますので、まずは気軽に使ってみていただければ。
高山 機能的な面での今後の展望は、データがどんどん溜まっていくので、蓄積したデータを活用して生成AIを作ろうという案が出ています。当社では20年分のデータが溜まっているので、予測ができたりするようになると「ベテランスタッフAI」のようなものができるかなと考えています。たとえば「どこどこで漏水が発生しちゃって、どうすればいい?」とAIに質問すれば、「何月何日にこれが発生しています」というのをデータベース上から引っ張り出してきてメッセージで返してくれるような。
-- それは面白い!とても楽しみですね。本日はありがとうございました。
株式会社パルコスペースシステムズ
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事業内容:空間創造事業(インテリアデザイン、ブランディングデザイン・セールスプロモーション、照明設計・制御、デジタルサイネージ・映像演出、内装監理、内装工事、建築・内装電気工事、電気通信工事)、施設運営事業(プロパティマネジメント、ファシリティマネジメント、ビルマネジメント)
施設管理システム『+BISION』https://www.parco-space.co.jp/plusbision/
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