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【生産性向上の支援・情報提供】第1弾 生産性向上に取り組む事業者の事例紹介とインタビュー

2024/09/24 12:00

第一弾 <事例紹介> 

第一弾となる今回は、西日本と北海道に所在する流通量販店で食品外の商品をメインに取扱うビルメンテナンス企業様が、従来業務を性能発注へと変更することで生産性の向上を収めたそのノウハウについてインタビューしました。


今回の生産性向上ポイント

以下の生産性向上に資するメリットを享受
 ◆特定施設への拘束時間 約40%減!
 ◆発注者の支出負担を増やすことなく、時給単価を増!
 ◆作業を行う時間の指定を無くすことで、人員配置効率を最大化!
 ◆清掃ポイントを利用者目線で絞ることで、作業効率UP!       etc.

■従来の契約■
(一般的な仕様発注業務)

 ・作業時間 : 指定の3時間/日
 ・頻  度 : 指定の15日/月
 ・時給単価 : @1,000円
 ・人  数 : 1名/日
■新たな契約■
(性能発注業務)

 ・作業時間 : 任意の1時間/日
 ・頻  度 : 任意の26日/月
 ・時給単価 : @1,500円
 ・人  数 : 1名/日




インタビュー

アスカ美装株式会社
代表取締役 : 森脇 大統 氏

 

これまで、お客様には最低賃金の引上げに合わせて契約金額の見直しをしていただいていましたが、いつまで継続してご対応いただけるのか…と思ったことがきっかけですね。実際にお客様側としても発注金額を永続的に上げ続けられないというお悩みを抱えていました。また、我々としても社会情勢に合わせて契約金額を上げていただいたからといって、利益が上がるわけではないんですよね。あくまで最賃分の契約金額が上がっただけですから。
このままだと弊社もお客様もお互いに苦しいなと思っていました。

3年ほど前から双方の悩み解決に向け、様々な提案をおこないました。当初は人手不足やコスト削減という点で、人手を必要としないロボット導入の話から始めましたね。しかし、当時はまだロボット導入へのハードルや課題も多くありましたし、該当の建物の規模感とマッチしておらず導入には至りませんでした。他にも様々なご提案をしていたのですが、費用や人員の面でお互いが納得のいく解決案が見つからず難航していました。

そこで、今年の年始に大きく方向を変え「お客様がきれい・汚いと感じる場所にポイントに絞って効率的に清掃する」という提案をすることにしました。ポイントの対象とした作業場所は主にトイレ、エントランス、駐車場、エスカレーターのガラスや手すり部分が中心です。
お客様は契約変更に伴う金額の見直しは難しいとの悩みを抱えてましたので、弊社側のコストを削減しつつも、来店する方々が感じる「きれい」のレベルを下げないことを意識しました。

私含めビルメン関係者の方は「清掃 = 床清掃」というイメージが強いですが、買い物をする人はそもそも床を見ながら買い物はしないですよね。むしろ商品を探すために上の方に目線が行きがちなのではと思いました。
そのようなことから、お客様と一緒に買い物する人の目線で「汚い」と感じる部分の洗い出しを行いました。例えば、トイレの汚れはもちろん、エスカレーター等のガラス部分は手垢が付着していると目立ちますし、駐車場やエントランスに汚れやゴミが散乱していると「汚い店」と第一印象に刷り込まれてしまうのでは、といった形で候補を割り出しました。そこに注力して清掃することで利用者が感じる「きれい」を保ちましょう!という契約に落ち着きました。

最初は1ヶ月間ほど実験的にこの方法を行い、その効果をお店の方や関係者、お客様にヒアリングしました。結果的に毎日3時間で月15日現場に入って清掃するよりも、一日1時間程で月26日現場に入ってポイント的に集中して清掃する方がお客様に「きれい」と感じてもらえることが分かりました。
実際にこの契約を開始してまだ半年ほどではありますがクレームは一回もありません。
逆にこれまでの清掃ではお客様に価値を感じてもらえていなかったのかなと考えるきっかけにもなりました。

まず、スタッフの働き方に大きなメリットがありました。これまでは9時から12時まで、といったように作業する時間に制約がありました。しかし、今は開店から閉店時間までの間に作業を実施するという契約に変更となっています。これがスタッフ、特にお子さんがいる主婦層にとって非常に良い条件となりました。主婦層は家庭の事情やお子さんの体調不良など、どうしても突発的に休まなくてはならない状況が発生しやすいです。今回の条件であれば、何かあった場合でも他のスタッフを用意するリードタイムがあるため、会社としてもスタッフとしても対応がしやすくなりました。
また、人員配置に関してもパフォーマンスが上がりました。今回の契約でスタッフの稼働時間を4割程減らしていますが、時間給は1,000円程だったものを1,500円まで引き上げてもらいました。時間単価は上がりましたが稼働時間は減っていますのでお客様の総支払い金額は上がりません。しかし、弊会としても作業時間の制約が無いことで、他の現場とピークタイムを分散することが可能となりますので効率的な人員配置ができます。
今回の契約変更はお客様にとっても我々にとってもWin-Winの結果となりました。

少し内部的な話になってしまうのですが、求人広告を出す際にこのような働き方を説明することがとても難しいです。都市部だと「スキマバイト」のような単語も普及していますので何となくイメージができる求職者が多いと思います。しかし地方だとまだまだ定着していないので、どうやって求職者にアピールするか難しいですね。

今後の課題としては、作業時間が短くなりましたので、これまでの作業を圧縮した作業手順をしっかりと作り込み、均一化していくことですね。今回のケースで作業を圧縮していく際には、毎日清掃することで簡易化できる部分、お客様に「きれい」と思っていただけるラインの見極め、どの部分が非効率だったか等を含めて検討していく必要があります。
そうなると、施設の利用頻度などを分析し、作業の強弱を判断できるようになればよいと考えています。

あとは「きれい」を平均的に継続し続けることも課題です。今は実験的な段階ということもあり、特定のスタッフに任せているので、ある程度品質が一定化されています。しかし将来的には多くのスタッフが毎日ランダムに入る可能性もあります。
今の契約では「作業内容」ではなく「きれい」をお客様に提供しています。そのため、作業する人によって清掃品質に偏り(強弱)が生じてしまうと、お客様の中で「きれい」な日と「汚い」日の基準が何となく上振れして出来上がってしまいます。「汚い」と指摘された場合「きれい」にするために時間外で対応する可能性もあり、先にあげたようなメリットを生かせなくなってしまいます。
そこをクリアにしていくことも今後この契約を広げていく中で解決しなければいけない課題だと思います。今回の契約は、「きれい」の定義がまだ曖昧だからこそできた方法かもしれませんね。

最後に大きな課題として、このような契約事例が全国的に少なく、まだ浸透していないので、現状だとしっかり信頼関係ができているお客様にしかご提案できません。今後全国的にこういった契約が増え、理解を得られてきたら交渉しやすくなっていくと思います。

現段階ですと今回のようなケースは小~中規模物件が適しており、逆に大規模物件だと導入は厳しいかもしれません。
というのも、大規模物件はどうしても「きれい」にする対象や範囲が広くなってしまい、それに応じてお客様からの要望や制約が多くなってしまいます。弊社も今回はトイレ、エントランス、エスカレーターとわかりやすく絞れた結果うまくいったんだと思います。
まだまだ浸透していない考え方なので今は小中規模の施設からチャレンジし、皆様と一緒に事例を増やしていくことで将来的にはお客様もスタッフもビルン企業もWin-Winな契約となっていければと思っています。

アスカ美装株式会社
〒634-0072
奈良県橿原市醍醐町296-1
TEL:0744-24-1757(代表)
代表取締役社長:森脇 大統
事業内容:設備管理・清掃管理・警備、指定管理業務、PFI事業 ほか
https://www.asukabiso.co.jp/




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