自主性を引き出し、得意を活かす
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平和興業株式会社
代表取締役 米澤 勉
―――入社されたきっかけは何ですか?
米澤 入社のきっかけは、大学を卒業する当時に堺支店長だった父親に声を掛けてもらったことでした。父はこの業界で長年働いておりましたが、私はビルメンテナンスという業種に関してはまったくの初心者でした。しかし、父の勧めで一度足を踏み入れてみると、思った以上に達成感を得られる仕事だと気が付きました。
―――どういった所に達成感を感じることができましたか?
米澤 ビル管理で一番最初にやった仕事は大阪市役所で、朝早い時間に清掃担当者が掃除機をかけた後に目立てブラシという絨毯の毛足を整えるブラシを使って引っ張って整えていく作業をしていました。それを何部屋もやって足跡を消すという作業をやりました。土曜、日曜になったら床材を剥離してワックスがけをしたりとか。そうすると目に見えて綺麗になるんですよ。身体を動かして汗をかくことも好きなので。初めてのことばかりでしたが、そこに仕事のやりがいや面白みを感じていました。その後も営業活動をするにあたり、清掃の経験を活かすことができました。話に説得力や厚みを持たせられますし、そういった意味でも現場で培った経験がとても役に立ちました。
―――これまでの業務の中で、特に大変だった時期はありましたか?
米澤 もちろん、あります。特に忙しい時は、移動先でもスムーズに報告書を作成できるように、軽四の社用車にパソコンとプリンターを積んでいました。当時はまだガラケーの時代で書類は手書きで処理しているものが多かったので、それが非常に手間でした。どうしたら効率よくできるかを考えた時に、パソコンの力を使えば絶対に状況が改善されると確信していました。それで最初はインクジェットプリンターを積んでいましたが、インクがすぐに無くなるんですよ。なのでレーザープリンターを買ってきて、それを車のバッテリーから電源を取ろうと100Vに変換するインバーターも用意して繋げてみたのですが、電源が点かない。変換機は1000Wまで対応しているし、プリンターの説明書には800Wって書いてあるのにどうしても点かない。どうしたものかと困った末にプリンターの会社へ連絡して聞いてみたら、「電源を点ける一瞬だけ1200Wくらい使うんです。どこで使っているんですか?」と聞かれて「車です」と答えたらびっくりされました(笑)。
すぐに1500Wのインバーターと交換して、使えるようになりました。それからは報告書もばんばん出せるしむっちゃ早い。でも軽四のバッテリーだけでは心もとないので、ソーラーパネルを買ってきて、車の前の窓ガラスから太陽光で発電していました。
―――それは全部ご自身で考えてやられたんですか?
米澤 もう自分で考えてやっていましたね。パソコンは小学6年生の時からやってきていたので便利なことはわかっていました。父親が結構詳しかったこともあり、子どものころから家で使わせてもらっていて。そういった経験があったからか、車にパソコンとプリンターを積んで仕事を完結させるという発想に繋がりましたね。
―――山田さんから見て米澤社長が入社されたときの印象はどうでしたか?(インタビュー時に同席されていた取締役の山田さん)
山田 大卒の一番いい若者が入って来てくれて、とても頼もしかったですね。考え方も柔軟で、先程も言われていたようにコンピューター関係とか好きで得意な所も話していてわかったし、仕事を覚えるのも早かったし。支店長の息子が入社するということで、身構えることもなく接していくことができました。
米澤 皆さんに温かく迎え入れてもらい、優しくしていただきました。
―――人材確保が難しいと言われている昨今ですが、御社の取り組み等はいかがですか?
米澤 うちはあまり人が辞めないですね。残業は基本的にしないようにしていて、というか本人が考えて各々の自主性に任せるようにしています。仕事において必ずこの型にはめる、ということはしないので。型がないけれど、水のような感じで各々が環境に応じて変化していく。個性もあるし、得意なこともあれば不得意なこともありますので、得意なことを得意な人にやってもらう。例えば私は数字が苦手なので、毎日経理で計算しろと言われたら嫌です。そこは得意な人に得意なことで役割を果たしてもらうようにしています。
―――ご自身がされてきたように自主性を重んじる社風が合って、活躍されている方が多いんですね。他にはどのようなことを意識されていますか?
米澤 私は利益が出たら分けようという考え方をしています。決算賞与というものを出しているのですが、出た利益の3分の1は従業員へ、3分の1は株主へ、3分の1は会社に残すということを何年も前から続けています。例えば、わかりやすく9,000万円の利益が出たとしましょう。3,000万円を従業員へ、3,000万円を株主へ、3,000万円を会社へ。従業員にはその3,000万円を50人で分けますので、一人当たり60万円になります。この60万円をできたらゴールデンウィークの前に渡してあげたいと思っています。60万円あれば、家族とどこか旅行に出かけたり、美味しいもの食べてリフレッシュしたり、そういうことができるといいよね、と思って続けています。また、この決算賞与を通じて従業員一人ひとりが利益を出すためにはどう動いていけばいいのかを考え、さまざまなことに挑戦してくれているので、仕事を頑張ることに繋げていってもらっていると思います。
―――そういった考え方や発想はどこからでてくるんですか?
米澤 大阪ビルメンテナンス協会の繋がりや、ロータリークラブでも活動しているので、普段から色々な立場や年代の人のお話を聞く機会が多い環境にいます。そういった場で色々な人とのお話しの中からひらめきをいただいたりしています。昔読んだ石田梅岩や、三方良しの考え方についても、その時には特に何も感じなかったけれど後から発想に繋がるということもあります。そういった今までに読んだものや聞いたものを身にまとい、自分という個性ができあがっているのだと思います。恐らく皆さんもそうやって個性を作っていき、さまざまな個性ができているのではないでしょうか。その個性の集まりが会社なのだと思います。色々な個性が集まって、得意なところで力を発揮し、苦手なところは得意な人に補ってもらうような、補い合う関係性が組織において重要だと思います。
毎日従業員の方がせっかく来てくれて、人生の多くの貴重な時間を会社で過ごしてもらっているので、少しでも良いなと、楽しいなと思って仕事をしてもらいたいと思っています。やはり、人はずっと家にこもりっぱなしはいかんと思うんです。仕事に出て、人のためになることを頑張り、家に帰って美味しいご飯を食べて寝る。それがいいと思っています。
―――山田さんから見て社長の考え方はどのように感じていますか?
山田 とても柔軟ですね。意見や考え方が凝り固まっていないので、いい意味で意見が頻繁に変わります。社長は年上の経営層の方たちとお話しされる機会が多いので、その分社長よりも経験が豊富な方たちの意見を聞いて、その時その時の状況によって最善の方法を、導き出していると感じています。
―――今後のビルメンテナンス業界はどのようになっていくと思いますか?
米澤 これからは必ずAIの時代が来ると確信しています。もう来つつありますよね。今までは予防保全の観点から「対応年数が経っていますから交換しておきましょう」と事前に不具合を予防することができていました。次はセンサーを付けて例えば「いつもの波長とは違った波形がしているので、機械が止まるかもしれません」となり、ある程度の予測を付けながら人が見て確認しに行く。そういったことを今後は全部AIが自動的に感知して、不具合や不具合になり得る箇所の修復までを自動で行い、人を介さないで完全に自動化できるようになっていくのではないかと思っています。まだその段階にはないですが、現在はその5歩くらい手前にいて、いずれ維持管理も何でも自動化になるのではないかと思っています。
ビルメンテナンスといいながらも、もし災害が起こった際に、全部AIや自動化に頼り切っていると、何もできないただの一般人になってしまいます。ビルメンテナンスにはアナログな部分も必要で、そのバランスが大事ではないかと思っています。
左から百原氏、湯原氏、米澤氏
Corporate Information
- 平和興業株式会社
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- TEL: 06-6672-0216(代表)
- 代表取締役 米澤 勉 https://www.heiwa-kogyo.com/company/