

新たなことに挑戦し、周りから真似される会社になる
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ハウス美装工業株式会社
代表取締役:新谷 一城

―――ハウス美装工業について教えてください。
新谷 ハウス美装工業株式会社は、昭和34年7月の創業以来、法人顧客から一般個人顧客まであらゆるお客さま・年齢層をターゲットに運営をしています。特にビルメンテナンス事業や個人向けサービスでは、清掃だけでなく除草・剪定や内装リフォーム等幅広くお客さまのご要望をすべて解決できるようにサービスを充実させています。
その他にも飲食店などのフランチャイズ事業にも取り組んでおり、ビルメンテナンス事業以外にもチャレンジし差別化を図っています。
―――子どもの頃からハウス美装工業を継ぐと思っていましたか?
新谷 思っていました。保育園の卒業式で将来の夢を発表する機会があったのですが、その頃には「会社を継ぎます!」と答えていました。高校生、大学生になってからはアルバイトをする機会も増えていました。
ただ、大学卒業後は東京のメーカーや同業企業で約5年間働いていました。その後、香川に戻り当社で働き始め、昨年10月に代表取締役に就任しました。
―――東京から香川に戻り働き始め大変だったことはありますか?
新谷 地方と都心部の建物のメンテナンス方法にギャップを感じました。都心部では、建物自体が大きいので最新の機器を導入するなど、それに対するメンテナンスを見てきましたが、地方ではそこまで大きな建物がないので、少しアナログに感じていました。
しかし、地方ならではの“お客さまとの直接的なコミュニケーション”をいう強みもあります。ビルオーナーなどのお客さまの声を生で聞ける環境があるので、お客さまのニーズをしっかりと掴むことができ、密な信頼関係を築くことができます。また、お褒めの言葉も直接いただくので仕事に対する達成感もあります。
―――現在、ハウス美装工業で力を入れていることはありますか?
新谷 やはり、従業員の方への教育をしっかりと行っていきたいです。その中でも、安全教育は、清掃事業を行ううえで非常に重要だと考えています。地方は特に人手不足の影響で高齢の働き手が多いです。年を取るにつれて一般的に身体機能が低下するため、そこから事故に繋がるケースが多いです。その中で、従業員がけがをせず安全に働けるように、労働災害防止のための教育に力を入れています。
当社では、入社時の安全教育はもちろんのこと、複数の従業員がいる現場では定期的なミーティングを実施しています。さらに、個人でも危機予測(KY)ができるように社員証の裏面にチェックリストを作っています。
その他にも、ハウス美装体操(HB体操)というものがあり、すべての現場で始業前に体操をしてもらっています。この体操は振り付けも高齢者が手軽にできるように、音源から振り付けまですべて1から作ったハウス美装工業オリジナルの体操です。
労働災害の発生件数が一時期増えていたのですが、1から安全教育を見直し、このような取り組みを行った結果、労働災害は減ってきました。それでも、起こってしまう労働災害はあるので、今後はそこをいかに減らしていくか検討をしています。

―――その他に、注力していきたい取り組みはありますか?
新谷 人手不足問題を解決するために、ロボットの導入やIoTの活用にも力を入れていきたいと考えています。現在も掃除ロボットはいくつかの現場で稼働しているのですが、お客さまと当社のニーズが一致した導入をしていかなければいけません。今後もお客さまとコミュニケーションを図りながら、最先端の技術を導入していければと考えています。
また、先月高松駅の近くに「香川県立アリーナ」がオープンしましたが、そこにはお掃除ロボットだけではなく、トイレには使用中の人数が把握できるシステムが導入されています。かなり広い場所なので、その場で状況をモニタリングしながら指示ができる仕組みを活用していく予定です。
新しい技術の導入に対して慎重になる人もいますが、当社ではそういった最新の技術を積極的に取り入れ、実際に運用してみて、いいと思ったものは周りにも伝えていきたいと考えています。そうして、最新技術の導入に四国が遅れを取らないように、率先して情報発信を行っていきたいです。
―――技能実習生の受け入れにも力を入れていますよね。
新谷 数年前まで四国では、技能実習生の受け入れがあまり進んでいませんでした。当社では、約8年前から技能実習生の受け入れを行っています。技能実習生への待遇はかなり良い方だと自負しています。技能実習生の皆さんのほとんどは、日本に来て最初の月はお金が無いため、住む場所を提供するだけではなく、当面はお金を使わなくていいように食料品など生活必需品を用意して迎えています。その他には、ビルクリーニング技能検定後にはお疲れさま会ということで、食事に行ったり、お花見やクリスマスにはお弁当やケーキを配ったりしています。
また、教育面でも、日本語は共に仕事をしていく上で大切ですので、教育担当の従業員がオリジナルのテキストを作っています。

―――積極的に新しいことに挑戦しているんですね。
新谷 多分新しいものが好きなんですよね。資機材メーカーの方が資機材の紹介に来た時に「この新しい資機材は○○会社さんも使っているんですよ」と言われたら、「それなら買わなくていいかな」と思ってしまいますね(笑)。新しい技術があればどんどん試してみたいです。どんなものでも一度試してみないと成功か失敗なのかは分かりません。試してみて失敗したら、その失敗を糧に別のものを試せばいいと思っています。
そして、周りがしていることを真似するより、「ハウス美装工業がやってるからやってみようかな」と周りに真似される企業になりたいと考えています
当社はビルメンテナンス事業以外にも、飲食店のFC事業で「まいどおおきに食堂」や「コメダ珈琲店」を運営しているのですが、どちらとも当社が運営している店舗が香川県1号店なんです。
―――何事もやるからには1番目、ということですね。新たに開始した事業「tasuLIFE(タスライフ)」について教えてください。
新谷 「tasuLIFE」は、2022年4月より「お困りごとを助けて、生活全般を豊かにする」をコンセプトに個人のお客さま向けに開始したサービスです。ハウスクリーニングはもとより、緑地管理、日曜大工、内装リフォームなど生活空間全般に係るさまざまな生活支援事業を行っています。
地方は高齢者の方が多くいろんな形で困っているケースが多いので、このようなサービスの需要は高まっています。また、この「tasuLIFE」は地域密着型なので、その地域の困っている方を助けることによって、地域の方からの信用を得ることができ、「tasuLIFEのサービスを提供しているハウス美装工業にならこの仕事を任せられる」といった形で他の商売にも繋がってくると考えています。
当社は法人のお客さまでも個人のお客さまでも「ハウス美装工業に相談していただければなんとかする」といった方針で事業を行っているので、このようなサービスが提供できています。
営業担当の従業員には、「お客さまから相談されたことは対応できないと思ったとしても一度持ち帰ってくるように」と伝えています。当社ができない仕事でも、当社のお客さまでできるところがあるかもしれないからです。そうやってお互いに仕事を紹介していき、WIN-WINな関係になれるのが1番理想の形だと考えています。

―――お客さまとお客さまを繋ぐ。コミュニケーションを大切にしてるからこそできることですね。
新谷 当社の会長が『「儲」の漢字は「信じる者」と書く。つまり、お客さまと信頼し合える関係性を構築することが、儲ける、お金という対価に変わってくるということ』とよく言っています。ですので、当社では従業員にお客さまとコミュニケーションをとり、信頼関係を築くようにしなさいと言っています。
私自身もできるだけお客さまと対話する機会を増やしていきたいと考えています。電話やメールを利用したほうが早いのかもしれませんが、直接話さないと分からないことが多くあります。DX化やIT技術が進んだとしても、“コミュニケーションを取る”ことに関してはアナログでいたいと考えています。
―――最後に、今後ビルメンテナンス業界はどうなっていくと思いますか? また、どうしていきたいですか?
新谷 今後、業界によってはほとんどが機械化できる業種が出てくると考えていますが、ビルメンテナンス業界、特に清掃に関してはどれだけ機械化が進んだとしても、人の手が必要な業務です。その人の手が必要な限りビルメンテナンス業界はこれから先も続いていく、残っていく業界です。
だからこそ、高齢化、人手不足等さまざまな課題がありますが、IT、ロボット等できる限り最先端の技術を導入し、いろんな形で足掻いてトライ&エラーで少しずつでも業界をよくしていきたいと考えています。
そして、当社としてもさまざまなことにチャレンジし、「ハウス美装工業が導入しているからいい機械、いい仕組みなんだろうね」と言ってもらえるような会社にしていきたいです。

Corporate Information
- ハウス美装工業株式会社
- 〒760-0071 香川県高松市藤塚町三丁目12番12号
- TEL: 087-861-4489(代表)
- 代表取締役:新谷 一城 https://www.housebiso.co.jp/