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社会の転換期だからこそ、総合ビルメンテナンスにできることは増えている。

2022/01/25 17:35

2022.1.25 17:35 更新

警備、消防設備、環境衛生、建設、医療機器販売等
さまざまな事業を行うからこそ
強みが増します。

―― 協和総合管理さんは北海道のビルメンテナンス業界でも老舗企業の一つです。

山本 祖父が創業し、私で5代目になります。令和元年の6月に代表職に就きました。
私はクルマが好きで、子どもの頃からクルマに関わる仕事がしたいと思っていました。ですが家業であるビルメンテナンスを継ぐ者が家族の中で私の他にいなかったもので、いつかは私が継がなければならないのだろうと考えていました。
ですから高校を出て、まずは今後の社会に必要不可欠なパソコンと情報通信を学ぶために大学へ行くと同時に専門学校に進みました。その後、ジョンソン・プロフェッショナル(現・シーバイエス)に入社して首都圏営業に配属され、ビルメンテナンス企業をお客様にセールスの日々を送りました。

北海道小樽市に本社を構える協和総合管理株式会社は、1963(昭和38)年に創業した北海道のビルメンテナンス業界でも歴史ある会社の一つだ。清掃・警備・設備から指定管理、環境衛生、不動産賃貸、商品販売など、多彩な事業を展開している。

――その時代に清掃資機材のことをしっかり学ばれたわけですね。

山本 当時のジョンソンの営業は、清掃資機材に関してセンサーの分解やモーターなどについても講習を受けて、お客さまの現場に行ってモーターを分解したり、清掃機器の修理も行っていましたので、ワックスや洗剤の知識だけじゃなくさまざまな機器についてもビルメンの方たちよりかなり知識豊富で、詳しかったと思います。
そこから小樽に戻って来まして協和総合管理に入社し、新入社員として札幌支社に配属されました。そこで現場に携わりながら、係長、課長、次長、支社長と研鑽を重ねてきました。

―― 青年会議所で理事長も務めていたそうですね。

山本 はい、良い経験をしました。その活動を卒業してから、会社の代表取締役に就任し、3年が過ぎたところです。

―― 若手経営者でもある山本社長から見て、北海道のビルメンテナンス業界はどのような状況にありますか?

山本 私の地元である小樽市について言えば、地元のビルメンテナンス事業者数も限られていますので、業界のコンセンサスがきちんと取られています。
同時に現在の小樽市は人口が約11万人になり、少なくとも今後15年ほどで人口5~6万人に減少すると言われていますので、必要のない施設や建物が増えていくだろうと思います。
ということは、ビルメンの市場も明らかに減少していくわけで、縮小していくこの街のサイズに合わせて最大限できることを行って維持していく。ビルメンテナンスビジネスとしては、そういった流れになっていくと考えています。明らかに右肩下がりですが、これは受け入れざるを得ないです。

人口も経済も縮小していく地方都市を守りながら、多様な取り組みに挑戦していく総合ビルメンテナンスには、まだまだ可能性があると山本氏は語る。
向かって左側の写真が、同社創業者の山本勉氏。北海道のビルメンテナンス業界のみならず、道内通信施設の整備拡充と発展に多大な貢献をした人物としても知られている。

―― 厳しい現実ですね。

山本 確かにそうです。けれども下降があれば上昇もあるのが市場というもので、我々も次の新たな商業圏を開拓しています。
たとえば、ニセコ町方面が売上を伸ばしています。

―― なるほど、ニセコ町は世界中にファンができて、土地の売買や分譲マンション、観光施設も増えました。

山本 他にも札幌圏でいうと、石狩市が伸びていくと考えています。
新港と言われる地域に大手企業の物流施設ができたり、大きな施設が建設されていくので、そういったエリアに積極的に関わるために行動しています。

―― 一方でダウンサイジングしながら、他方では確実に攻めていく。その持続力が大切だということですね。

山本 企業は継続しなければ企業ではありません。しっかり会社というものを残して、税金を納めて、初めて企業なのだと言えます。
これはちょっと失礼な言い方かもしれませんが、最近になって登場したユーチューバーという職業に見られるような、「自分一代だけでいい仕事」というのは、街にとって必要な仕事なのでしょうか。誤解がないように先に言っておきますが、私も好きでよく見ておりますし、
いま生きている人たちにとっての「娯楽」という点では求められているのかもしれません。
ただ、長く継続できない仕事は街や国を次世代に渡って維持していくためには必要ないのかもしれません。
ですから地元に根差し、息を長く、堅実に続けていくことが重要です。そしてそのためには現状維持だけでは後退ですので、少しでも売上を伸ばしていくことが必要だと考えています。
それと今後はインターネットの普及だけでなく、新幹線も延伸し、いわゆる「距離の壁」がさらに無くなっていきますので、この影響による商業圏の変化にも敏感に対応していく必要があるでしょう。

―― ビルメンテナンスの業務配分については、どのような構成になっていますか?

山本 清掃3割、警備3割、その他で消防設備、設備管理、環境衛生、特定建築の定期検査などで構成しており、多様な事業を行うことで総合ビルメンテナンスの強みを増しています。
またこれも弊社の特徴かもしれませんが、営業の入り口は清掃ではなく「警備」なのです。まずはお客様に安心安全をお届けすることが協和総合管理の基本姿勢で、これによって清掃だけを行う企業よりも圧倒的に信用力が高いのです。警備システムも「Kネット」という自前のシステムを組んでおります。お客様が「自前で出来なくて、必要なもの」をご提供し、さらにプラスアルファを付け加える。ここが重要だと思います。
建物の維持管理について北海道の今後の傾向に関して言えば、たとえば小樽、ニセコ、倶知安、富良野方面などでも、海外の方が購入された建物は普段は住んでいないので、セキュリティから清掃、電球の交換まで、「まるごとお願いします」ということになり、今後益々この傾向は強まっていくだろうと見ています。

観光都市・小樽の代名詞とも言える「小樽運河」。北海道開拓の玄関口として発展してきた商都小樽の重要な海上輸送路を支えたのが、荷物の運搬作業を効率化するため海面を埋め立てて造られた運河だ。
昭和を代表する大スター「石原裕次郎」が、幼少の頃に住んでいた小樽の街。JR小樽駅にはその名をいただいた「裕次郎ホーム」があり、記念プレートとともに乗降客を迎え入れる。