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ビルメンテナンスの世界から生まれた「総合環境衛生企業」。

2022/03/10 18:00

2022.03.10 18:00 更新

検査、評価、研究…、広義なアプローチで
これからの時代の環境衛生を見据える

―― 社名「環境衛生薬品株式会社」にもありますが、もともとは薬品に関する事業をされていたのですね。

黒田 創業は昭和37年、防疫用殺虫剤など薬品の卸会社として伝染病・感染症を対象にした薬を保健所に販売する会社でした。しかし地域保健法も改訂されていき、保健所での防疫が必要なくなり、我々の仕事が減っていった。
そこで保健所側からの打診で感染予防としての疾病媒介動物の防除方法、ペストコントロール(有害生物全般の制御)のノウハウを伝授いただいたのです。

―― 衛生や快適な環境の維持管理といった、保健所が行ってきた役割を御社が担うことになったのですね。

黒田 保健所、つまりは自治体の防疫班がなくなってしまったこともあり、パンデミック時などの緊急対応が必要になる際に、肩代わりできる民間企業が必要だったのだと思います。
大阪でのパンデミックを想定して「大阪府環境衛生コンサルタント協会(現一般社団法人 大阪府ペストコントロール協会)」の立ち上げに参画するなど積極的に邁進してきましたし、今も自治体やインフラ関連企業からの依頼は多いですし、複数の自治体とは特別協定を結んでいます。
また防疫は科学的な分野ですから研究も必要だということで、大学との連携による研究受託業務や国立がん研究センター様と共同研究契約を締結しました。臨床検査業や作業環境測定などを厚生労働省認可のもと実施して、2012年には正式に厚生労働省登録検査機関として認可を得ております。そして将来の社会への貢献を考えて、関西学研ラボラトリーや生活圏環境衛生研究所を立ち上げました。

長沼 環境衛生薬品の基本方針として、フードテスティングマネジメント(食品)、メディカルテスティングマネジメント(医薬品)、ビルメンテナンスマネジメント(住環境)という3つの分野において、有害生物による健康危害や、人間をとりまく危険な環境危害を取り除きコントロールする「バイオ・リスク・マネジメント」を行っており、これはすべて衛生に関わることです。

大阪市に本社を持つ環境衛生薬品は、大阪府、京都府、奈良県にまたがる関西文化学術研究都市(愛称:けいはんな学研都市)に「関西学研ラボラトリー」と「生活圏環境衛生研究所」を開設した。ビルメンテナンスを基盤とする企業がこの地で活動を行っている。
かつて同社で使用されていた害虫駆除のための噴霧器が、研究所の一角に展示されていた。しかしこの時代を経て、「虫を殺すから生かすへ」大きな価値転換を行ったところから、環境衛生薬品のさらなる発展が始まったと黒田会長は語る。現在同社では、生物実験の世界で大注目されているショウジョウバエ活用において日本のトップクラスにあり、特許も保有している。

“次の一手”を考えることが、事業継続・発展
さらには社員の技能・豊かさの向上に

―― 御社は独自の研究精神を深めながら、ビルメンテナンス企業の技術力や可能性も広げ、これからの時代をリードする「総合環境衛生企業」と言えるステージに立たれているのだと感じます。

長沼 保健衛生の世界は人々の健康を守り、かつ建物の衛生を管理する仕事でもありますから、ビルメンテナンス業にも通じます。また弊社は建物保全もしておりますし、日常清掃事業なども行っているため、自分たちはビルメン事業者であり、そこで成り立ってきたという自負があります。これまで関わってきた仕事や研究の一つ一つ、すべてを組み合わせてご提案できる強みがあると思います。

黒田 その通りです。会社草創期の取り組みはペストコントロールですが、建築物衛生法にもとづく建築物内の空気環境測定も行いますし、水質検査も行い、登録衛生検査所としての検査もあります。これらひとつずつ許認可を取るのはかなり大変でした。
そんな弊社では、掃除道具なども一式クリーンルームに保管しています。特別なものではない、どこにでもある掃除道具を、です。驚かれることもありますが、要は自分たちの業務内容一つ、意識一つで道具の扱いやその価値も変わってくるということです。

2020年8月、「新型コロナウイルス感染症」のPCR検査実施機関として京都府山城南保健所より許可を得て、11月にけいはんな事業所内に「PCRセンター」開設。
機器6台と充実の設備の中で、コロナ関連・PCR検査・抗体検査・抗原検査を実施。

―― 基礎研究も行われておりますし、何より驚いたのがPCR検査を新型コロナウイルス感染拡大が起こる遥か以前から行われてきたということです。

黒田 遺伝子組み換え食品の検査ができる企業としては民間で当社が唯一ですし、PCR検査に関しては以前から取り組んでおり、機器は6台保持しています。また、DNA解析の基礎研究に関して、当社では17年程前からショウジョウバエで遺伝子解明を行っており、2020年には理化学研究所や京大と共同研究を開始しています。

長沼 国内では長らくマウスが使われてきましたが、近年は動物愛護の観点から反対の声があがっています。これは諸外国同様のやり方で最先端の手法です。

黒田 これまで事業で考えてきたことは、常に「次の一手」を打っていこうということです。
再生医療やPCR検査は、もとを正すと住環境メンテナンスでやってきましたし、研究も、自分たちの事業を発展させるために行っています。
研究者が清掃の現場にも入っていき、清掃前・清掃後で菌のサンプリングを行います。そこから菌の培養をして、菌の発生や生息を見ます。現場にはデータが豊富にありますから、研究所の外に出ることも学びになるのです。

―― ビルメンテナンスが基盤にあり、あくなき探求心を持つことで事業の発展がある。そういった姿勢が企業価値につながっているのですね。

長沼 受託した案件をしっかりと実行する。これは大事なことです。
ただ、当社には社員の生活を豊かにしたいというコンセプトがあります。会社が成長し続ける過程で社員のスキルも高め、結果的に社員の生活の向上にも寄与できたらそれはとても価値のあることで、企業として本来の目指す姿だと思うのです。

食品等微生物検査と化学分析機器の分析ラインを備え、有害生物防除、殺菌処理、環境エンジニアリングなどの機能も併設する複合的な衛生管理施設。医療施設、住環境、食品や医薬品製造環境など顧客環境のモニタリング検査を定期的に実施している。

一般的な新卒採用は行わず、大学からの推薦中心に採用。会社の補助を活用し、働きながら資格取得を行う社員も多い。