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付加価値のあるサービスを提供しているという矜持を胸に「笑顔」と「サービスマインド」を持って取り組みたい。

2022/05/11 18:00

2022.05.11 18:00 更新

すぐに転職する予定が一転…

悔しさをバネに代表取締役へ


―― 野原社長はもともと新卒でサンワックスに入社されたということですね。

野原 実は楽天的かつのんびりした性格でして、大学4年のときにアメリカの西海岸からカナダ・ハワイへ2か月ほど行き、あまりの快適さに就職活動もせずに遊んで過ごしていました。さすがに親からはこっぴどく叱られ、どうしようかと思っていた時に、友人から「自分が働いている会社に来い」と誘われて雇ってもらった。それが当社サンワックスだったのです。
とはいえ、本音を言えば、「ここは1年働いて、親から勧められた会社に転職しよう」と思っていました。もともとビルメンテナンス業界を希望していたわけではないので、腰掛程度の感覚でしたね。
しかし、営業なのに、夏になっても秋になっても仕事が取れない。正直、悔しいわけです。

―― やはり営業として実績を残したい、と。

野原 はい、20代はここで頑張ろうと覚悟が決まりました。そこから仕事が取れるようになりましてね。会社の将来性を考え、いずれ民営化されるであろう公共事業に目を付けて、廃棄物処理プラントの運転監視を受注したり、行政施設なども積極的に開拓していきました。

―― 代表取締役社長になった経緯を教えていただけますか。

野原 私が28歳の時に取締役に、32歳で常務取締役に命じられました。私は結婚が37歳なのですが、結婚式のスピーチで当社の創業者である現会長から「野原は来年社長になります」と言われましてね、まわりの誰にも話していませんでしたから参列者の方々にずいぶん驚かれたことを覚えています。
それから28年間、雇われ社長としてどうにかこうにかやってまいりました。

サービス業として、「笑顔」を何より大切に

―― 御社は創業51年目ですから、野原社長は社の歴史の半分以上を担っておられますね。

野原 私自身、社会人歴がこの会社のみですし、どこかの後ろ盾があるわけでもありません。そんな中で自分にできることを考え、様々な業界の研修や会合に行って人脈を切り開き、コロナ禍の前は色々なパーティにもよく顔を出していました。正直な話、あまり仕事につながっているわけではないのですが(苦笑)、何歳になってもワクワクドキドキするような毎日を常に心掛け、視野を広げ、人脈のネットワークも豊かになりました。
そうした様々なご縁もあって、現在埼玉県ビルメンテナンス協会の会長は6年目、他にも埼玉西武ライオンズ彩の国後援会の副理事長、日本アイスランド協会の理事・事務局長などを担っています。

―― 西武ライオンズの後援会は地元ですが、日本アイスランド協会はどんなご縁でしょうか?

野原 ご存じの通りアイスランドは小さな島国なのですが、『ジェンダー平等』世界一の国として高い評価を受けています。そんな素敵な国に倣って、当社でも女性の活躍を推進するためにも興味があったのです。
今では当社も定例で女性社員だけのミーティングを開催し、彼女たちの感性や声を反映して、管理職やリーダーとなる人材を増やしていきたいと思っています。

女性社員ミーティングは本社の会議室に集合し、遠方の社員とはオンラインでつないで実施。和気あいあいとした雰囲気の中だからこそ、発言もしやすいという

社員の提案で撮影・デザインをして作成した、コピーが印象的なポスター。パネルにして社内に掲示してあった。社長と社員の距離の近さや、アットホームな社風が伝わってくる

―― 伺っていると野原社長はご活躍の幅が広く、どのお話も非常にユニークです。他方、新しい挑戦や、ビルメンテナンス業で心がけていることは何でしょうか。

野原 まず、この仕事は第三次産業、要はサービス業だということです。ですから常にサービスマインドを持っていきたい。サービスをする上で最も必要なことはやはり笑顔だろうという結論に達しました。基本的なことで、単純ではあるのですが、お客様先でも笑顔でいる社員は安心感を持って迎えられているでしょうし、明るく元気な社風にも繋がっていると自負しています。

―― 笑顔やサービス品質の向上などマインド的な成長を促している一方で、ISO取得をはじめ、将来的な持続性を重視した事業計画に力を入れられている印象です。

野原 例えば、一過性の取り組みで仕事が増えたとしても、それでは持続的な企業活動にはつながりません。事業の基盤づくり、仕組みづくりをしっかりとしていきたいと考え、2001年にISO9001品質マネジメントシステム認証を取得、2006年にはプライバシーマークを取得しました。取得に向けた取り組みを始めた当時は、まだまだ社内の積極性も高くなく、ある意味挑戦でしたが、会社としての自信や全社員の意識の高さにつながったと感じています。

―― 御社では、清掃ロボットの運用もされていると伺いました。

野原 数年前から自社の警備員が入っている施設で清掃ロボットを稼働させています。それ以前から大学や文化ホールで運用させた実績もありますし、今現在は官公庁の庁舎で4台ほど運用しております。施設の利用者が不在になる時間帯で、かつ我々の警備員が常駐している施設でなら十分使えるという手ごたえはありますし、可能性を模索している最中です。

―― 最後に、今後のビジョンについて教えてください。

野原 環境衛生管理や設備保守管理、保安警備といったことはもちろん、行政施設の運営管理を委任される指定管理者も力を入れ、実績も重ねています。そこでしっかりとお客様から選ばれるような会社にしていきたい。そのために、繰り返しになりますがサービスマインドを忘れないこと、笑顔を大切にすること。基本ではありますが、やはり最後はそこに尽きると思っています。

埼玉県ビルメンテナンス協会の会長でもある野原社長。2002年FIFAワールドカップが行われた埼玉スタジアム2002で、2016年にはスタジアム内の会議室などで清掃ロボットの運用イベントをしたという実績がある

芸術家である知人に書いてもらったという「笑顔」の書。自社、そして自身のモットーとして掲げているそうだ