外部とのネットワークを大切に、 フェアプレーを心掛けて。
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株式会社互幸ワークス
代表取締役 竹中伸幸
2022.06.28 10:00 更新
学生時代は現場のガラ出し※も…
先代である父親の手助けとして清掃業界へ
―― 創業者はお父さまということですね。
竹中 はい、父は大手企業で働いていましたが、体を悪くしてからは入退院を繰り返すようになり、退職後に「何かやらなくては」と個人で工事現場の引き渡し清掃を始めました。最初のころは明日も見えない状況でかなり大変だったらしいですが、その後に法人化し、会社としては45年目になります。
創業後も父の体調は万全ではなかったので、その背中を見ながら正直心配していましたし、私自身も中学・高校の頃に現場のガラ出しなんかの手伝いをしていたこともありますね。
とはいえ、特に「後を継いでくれ」と言われたことはなく、メーカーに就職して営業職として奮闘していました。
※ガラ出し・・・建設現場で生じた大きめの廃材をひとまとめにして、搬出する作業
―― 株式会社互幸ワークスに入社したきっかけは?
竹中 父の体調面が心配だったのと、父が関わっている業界を覗いてみてもいいかな、と感じたことでしょうか。これ、という明確なきっかけというのはないのですが、まずやってみて考えればいい、という開き直りのような気持ちもあり、今から22年前に入社しました。当時はパートさん含めて100人弱くらいの規模でした。
―― 現在はグループ会社も含めると870名という規模となっており、経営も順調ですね。
竹中 おかげさまで、規模は徐々に大きくさせていただくことができました。
守備範囲を広げずに大手から降りてきた清掃業務を地道にこなすという時代もありましたが、競合が増えると利益も取れなくなります。だからできることはどんどんやっていこうと、私自身勉強しながら清掃業務や設備保守、警備、不動産関係と間口を広げてきました。
また、大型物件だけを追いかけず、小ぶりな物件でも付加価値を生み出すような発想を大切にしてきました。その中で行政の案件にも力を入れるようになり、自転車駐輪場の指定管理者として管理運営をしていましたし、給食事業や医療関係警備などもやっています。
他方、官公需適格組合 川崎市ビルメンテナンス業協同組合という組合があるのですが、私はそこの代表理事もしています。ほかにも全国中小企業団体中央会という団体の役員を担っています。
1社では抱えきれない社会課題が増大。
より外部との連携の重要性を実感
―― 積極的に組合や団体に所属してきたのですね。その目的は?
竹中 先代の頃は業界繋がりの組合には所属していませんでしたが、私は勉強の意味合いも込めて地域の商工会関係に積極的に出席しています。異業種なので受注に繋がることもありますが、それはごくまれで、逆に知り合いになった印刷会社さんに発注をしたりすることも多いです。
あとはネットワークを活かして、人材不足、外国人材・高齢者雇用、働き方改革、ロボット活用、脱炭素、SDGsといった様々な課題について議論していかないと、業界自体が存続できないという危機感を持っています。無論これらはビルメンテナンス業界特有のものではありません。自分たちだけの、要は既得権益者だけではなく、広く労働集約型産業をまとめて国や自治体に陳情するといったことも参加している組合などの団体を通して行っています。
―― 特に人材不足はあらゆる企業で切実な問題です。御社ではどのように工夫をしていますか。
竹中 研修の実施はもちろん、あとは誕生会で会食をしたりプレゼントを贈ったりしています。少人数の現場が多いために横のつながりが希薄になりがちなので、そこは会社として盛り上げたいなと思っていますし、みんなで集まってディスカッションをする機会をなるべく作りたいと思っています。
技能実習生として外国人も7名雇用していますし、障がい者雇用も古くから力を入れています。養護学校や特別支援学校には年に何度か足を運んでおり、興味を持ってもらえるように働きかけています。彼らの理解度もそれぞれですが、適材適所でマッチングするとものすごい能力を発揮してくれます。今年も新卒で1名入社してくれて、今一生懸命やってくれているのでうれしいですね。
――人材不足含め、1社では抱えきれない社会問題に対しても向き合っておられるのですね。
竹中 もはや自社オンリーでやっていく時代ではないと思っています。
例えばBCP(事業継続計画)の対策は、地元で防災協定を結んでも、地域全体が被災してしまったら本末転倒になってしまう。そのときにネットワークをうまく利用して例えば川崎で災害があったら広島に頼むといったような、具体的に落とし込んだものを作る方が理にかなっていると思いますし。
――会社経営をする上で、信念や座右の銘となる言葉はありますか?
竹中 社員にもよく話しているのですが「フェアプレー」を尊重することを心がけたいと思っています。お客さまに対しても、同業他社さんに対しても、そして社員同士でも、すべてにおいて「フェアプレー」だよと。フェアプレーをした結果、敗北したという場合もありますが、だからといって何でもありじゃあダメだよ、ということです。
―― 自社に加えて組合や団体などにも関わっておられるのでご多忙だと思いますが、仕事以外の息抜きは?
竹中 私は会社にいる時間が多くありませんが、会社に来て、社員のみんながいるとホッとします。だからいつも息抜きさせてもらっているということですね。みんなと顔を合わせて談笑して、もし何か問題があっても一致団結して処理してくれる。そんな環境があることが幸せです。だからスタッフには感謝しかないです。
ゴルフはゴルフで気を遣いますから、息抜きにはならないですね(笑)。
―― 今後の展望をお聞かせください。
竹中 培ってきたネットワークを活かしながら、より補完しあっていきたいです。中小企業は何でも自前でやろうとすると資金という壁がありますし、大手と同列で行こうとするのも無理があります。何ができるか、できないかをしっかりと見極めることと、地域に根差した部分はずっと守っていくことができたらいいなと考えています。
課題は事業継承でしょうか。世襲は特に考えていませんし、会社が繁栄しながら、今いるスタッフも満足できる方向で柔軟に考えていきたいと思います。
アルカリ電解水精製器を定期清掃や日常清掃の大型物件で活用したことや、ハイブリッド自動車の導入といった環境保護への寄与と、障がい者雇用など、これまで行ってきた活動が認められた
Corporate Information
- 株式会社 互幸ワークス
- 本社:〒213-0011 川崎市高津区久本1-2-5 関口第1ビル5階
- TEL:044-865-7166(代表)
- 代表取締役:竹中 伸幸
- 事業内容:メンテナンス、清掃、設備保守、マネジメント、修繕工事・リフォーム、その他
- http://www.gokou.jp/