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国内外の人材育成に根本からアプローチ。 勝ち残るために挑戦を重ねていく。

2022/09/20 15:00

2022.09.20 15:00 更新

ベテランクリーンクルーの一言で人材の整備と評価の大切さを実感

―― 先代であるお父様が設立された会社だということですね。

倉田 父は元々株式会社リンレイに営業職として入社し働いていました。実家の家業が箱根の旅館ということもあり、地の利を生かし地元エリアにおいてトップレベルの営業成績だったそうです。

そこでリンレイより「エリアでの業績を評価し暖簾分けする」と打診され、
昭和33年に独立して株式会社東海リンレイを設立して、ワックス及び清掃資材の販売業からスタートしています。
エリア的に旅館やホテルが多いため、メンテナンスのニーズがあるということで昭和38年に株式会社東海ビルメンテナスを分社設立しています。

―― 倉田雅史社長はどういったきっかけで後を継がれることになったのでしょうか?

倉田 私自身も父と同じようにリンレイにお世話になり、7年程勤めました。平成3年に私が結婚し、翌年平成4年29歳の時にタイミングがいいだろうということでまず営業部長として当社に入社しました。その後、平成10年に父が急死し、私が
35歳の時に代表に就任しました。

―― 思い出深いエピソードやターニングポイントとなったことなどはありますか。

倉田 入社してしばらくは、本当に大変でした。私自身営業畑で鍛えられたので仕事を取ってくることはできても、現場の人材が足りず、自ら清掃に入って働きました。
ただ、ベテランのクリーンクルーに「倉田さん、あなたに求めているのは完璧に掃除をすることではく、私達をしっかり見て給料を上げてもらうことだからね」とハッパをかけられたことは今でも覚えています。
人材が整ってこそ仕事が回り、その人材へ適正な評価がないと続けてくれない。ここをおろそかにしてはいけないと改めて感じました。

外国人材を積極的に採用。
新規事業である日本語学校の開校も実現

――社長就任後、順調に業績を伸ばし続けておられます。経営面で工夫していることは。

倉田 時代のニーズと共に事業の拡大を図りながら東京から名古屋まで広範囲に拠点を構えるなど色々なことをしましたが、早くから外国人材を採用するようになったことは非常に大きなポイントだったと思います。
当社のスタッフは現在約2,800名おり、外国人就労者数は450人ほどで、正社員扱いに近い方が 30 人います。今ちょうど現場の責任者クラスの教育と試験をしています。
早くから外国人技能実習生を入れるようになったことで、円滑に働いてもらうような仕組みづくりができたと思います。彼らは、指標をもとに評価をきちんと出すこと、決まり事に対しては合意を取って納得してから動いてもらうこと、休暇など母国の文化や価値観を尊重することなどポイントを押さえて一緒に働いていくことが大切で、正しいコミュニケーションがポイントと思います。
ただ言葉の壁はどうしてもありますし、採用面も苦戦していたので、「根本から整えていかなければいけない」と思って、日本語学校を作りました。

―― 日本語学校について詳しくお聞かせ下さい。

倉田 「リバティ小田原日本語学校」は、神奈川県西部で初めての日本語学校として、文部科学省・法務省の認可を受け、平成28年に開校しました。
留学生の学習面では日本語能力試験N2~1を目指し、寮の完備、アルバイトのあっせんなど、生活面も支援する体制にして、開校以来東南アジアの学生を中心に入学してくれています。アルバイトは、当社に加えて近隣のスーパーなどにも紹介しています。
当初は卒業後に大学や専門学校へ進学する流れでしたが、近年は地元の企業に就職する生徒も出てきており、喜ばしいことですし、頑張っている姿にグッときてしまいますね。

―― 教育という土台から作っていくというのは真の人材育成だと感じます。

倉田 目的と手段を明確にして、ある程度長い目で見ていくようにしています。
とはいえ、コロナ禍で当社が最も打撃を受けたのがこの日本語学校です。留学生が日本に入国できず、国からの補助金が一切出ない状態だったので、国内の日本語学校は閉校が相次いでいます。当校は本業があったので持ちこたえ、今年はどうにか60名ほどの入学者が入ってくれ、もう一度再構築させていこうと奮起しています。
外国人の技能実習制度も特定技能制度も、規制の多さなど色々と課題があると感じています。私自身も外国人材受入支援センターの専門委員に入ってどんどん意見を述べている最中です。あとは、外国人材に限ったことではないのですが、研修内容の改善も図っており、これまでテキストを渡して行っていたものを、わかりやすくするために階層別のビデオを作成して実施しています。加えて、全現場にスマートフォンを配布して報告や連絡ツールにしたり、勤怠管理や給与明細をオンラインにするなどデジタル化も進めていきます。

―― 人材育成やデジタル化は様々な企業がなかなか着手できていなかったり試行錯誤したりという中で、倉田社長の素早い判断力や有言実行の機動力が新たな道を切り開いているのだと感じます。

倉田 デジタル化においては当社もやっと、というところですが、今テコ入れをすることで将来的には大きなコストダウンとなりますから。
人材育成は企業経営における最大のテーマだと思います。先代からの社是である「信頼」「協調」「感謝」をしっかりと伝えていくこと、加えて、『顧客・現場第一主義』を貫き、お客様には誠心誠意、従業員には評価、報酬といったところを最大限に行っていきたいと考えています。

「出生数が大きく減少している日本において、例えば20年後、国内の高校や大学を卒業した新卒が我々の会社に、ひいてはこの業界に来てくれるのか?
正直難しいのではないかと思っており、今からその時のことを考えて外国人材採用も含めて取りくんでいかなかければいけない」と話す倉田雅史社長
神奈川県小田原市の本社近くにある「リバティ小田原日本語学校」。語学に加えて、進学・就職への充実した指導を行っている。
東海ビルメンテナスに特定技能として就職した卒業生も
社是である「信頼」「協調」「感謝」には、組織内のみならず事業者や顧客との信頼関係を結び「感謝をしてもらえる企業であり続けたい」という意味が込められている