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「新たなビジネス」創造を通じて 人材“発掘”と“育成”に挑戦する若き取締役。

2022/12/15 10:00

2022.12.15 10:00 更新

東日本大震災後の住宅復興事業のために、入社間もなく600人超の大規模現場を束ねることに。

―― 先代のお父様が創業した会社ということですが、入社の経緯について教えてください。

三瓶 トーカンオリエンスは先代である父が創業した会社ですが、兄も2人いますので、父の会社の事は意識しておらず、当時の私は公認会計士を目指して勉強をしていました。
そこに、トーカンオリエンスで当時経理をされていた方が辞められて、手が足りなくなり、会計士の勉強をしているからということで「手伝いに来てほしい」と、ピンチヒッターとしてアルバイトで入社したのが最初になります。卒業するまでの間、バイトと大学と、二足の草鞋を履いての生活でした。

―― 会計士になるのが夢だったのですね?

三瓶 はい。とはいっても、大学生になってから漠然と「先生」と呼ばれる仕事に就きたいと思っていました。ですが、すでに教職課程を取るには遅く……。そうなるともう、士業を目指すしかないと思ったんです。私の同期の仲間は裕福な家庭の方が多く、とても優秀だったこともあり、皆そうそうたる超一流企業に就職していく中で、自分の中で「これは真正面から戦うのはつらい」と焦りがあったということもあり、また大学の経営学部に在籍していたことも手伝って、「それなら公認会計士の資格取得を目指そう」と思って勉強を始めました。
士業の中でなら、現実的に「公認会計士ならいけそう」という気持ちもありましたが(笑)
その後、結局ピンチヒッターのはずがそのままトーカンオリエンスに就職して、現在に至ります。

―― 現在はお兄様が社長を務めていらっしゃるとのことですが。

三瓶 兄弟がやっているビルメンテナンス企業です、というのがセールスポイントの一つです。兄は経営、私は営業と役割分担してやっています。
7つ上の兄とは仲が良く、今後「どうやってトーカンオリエンスという会社を成長させていこうか」など、よく話をしています。年が離れているので、実は会社に入ってから話すようになったんですが(笑)。

―― 今に至るまでで、一番苦労されたことはなんですか?

三瓶 福島にいた時です。東日本大震災の復興事業で、約8年間ほど復興事業のために「長期出張」という形で福島にいたころが一番苦労しました。2011年に東日本大震災が起き、弊社は住宅復興事業に取り組むことになりました。そのため、正社員として入社して間もない私が福島にある統括事務所に詰めて、12現場600人ほどを束ねることとなったのです。「初めてのマネジメント」で600名もの大人数を統括しなければならず、もう毎日が大騒ぎでした。

―― そこで鍛えられたと。

三瓶 そうですね。復興支援にはいろんなところからさまざまな人が集まっていたうえ、それだけの人数がいれば毎日のようにトラブルが起きますので、それはもう凄まじい経験でした。ですが、復興支援事業の時から誠実に仕事をしてくれたスタッフ十数名という、得難い人材を手に入れることになり、また弊社東北支社に工事部を立ち上げるきっかけにもなったので、良い経験でもあったと思います。

「集まらない人材」は、発掘して、育てていく

―― これから三瓶専務が「やりたいこと」はなんでしょうか。

三瓶 ビルメンテナンス業から始まった弊社ですが、建築業も手掛けることができるようになり、新たな視点を得ることができたと思います。
これからの業界の未来を圧迫していく要素は何かと改めて考えたとき、大体の会社で同じ悩みを抱えてらっしゃるかと思いますが、「人材が枯渇していく」「原価の高騰」「IT化できていない。アナログな業態」…このあたりがビルメンテナンスも建築も共通の課題だと思っています。
生き残って発展していくためには「人材」がどうしても必要になっていきますが、今では米国の金利政策から始まった円安によって、海外人材にとっての金銭的メリットさえも薄れてしまっていて、人材離れはより加速する一方です。そうなれば、労働集約型の業態にとっては一番の痛手になってきます。
従来のやり方で人が集めにくいのだったら、人材を「発掘」する方向に行くしかないと考えるようになりました。

―― 発掘ですか?

三瓶 都内で働いている方々を発掘しようとしても難しいです。Iターン・Uターンなどが流行っていますが、進めている自治体側が受け入れできる企業を育てきれていないと考えています。例えば都市部で働く年収480万円くらいの方に「引っ越し資金出します、住む家も提供します」と言っても「でも年収300万円の企業しかないです」では、喜んで乗ってくる人は少ないです。
そこに私たちが、働く機会・場所を創出できれば、地方の人材をもっと発掘できるんじゃないかと思っていますし、Iターン・Uターンも実現できるんじゃないか、と考えています。
弊社はPPP(官民連携)に力を入れていますが、これはPPPの中で、官が残した遊休施設に私たちが新たなビジネスを創出して雇用を創出することを目的としています。
地方に住む若い方などの新しい人材を発掘して、育成していきたい。そういう方がどんどん増えていけば、地方同士の交流も深まって、日本全体で人材が流動するようになると。ネットで完結する物事の方が多くなっていくであろうこれからの時代で、育成した人材をフル活用すれば相当数の仕事が「土地をまたいで」包括管理などができるようになっていくんじゃないか、ということを考えています。

―― 実際にどのような取り組みを?

三瓶 例えば弊社で実際に取り組んでいる事例としては、廃校となった学校(分校舎)を宿泊型の施設へとリノベーションして、地元の若者たちを採用してそこの管理運営をしてもらい、SNSなどを活用して首都圏から人を呼び込んで、地域を盛り上げて……といったことに挑戦しています。
そこの運営スタッフと言いますか、館長を地元の27歳の方にお願いしています。Youtubeやテレビ、ラジオといったメディアとの連携や、ブライダル業界とのサービス提携など、再生したハードを通じて従来型のビルメンテナンスだけではできないサービスを作り上げ、新たな雇用を生み出していく、というわけです。
それをやって行く上で、最初のコンセプトデザインとして「建物自体をこうデザインしていればやりたかったことに近づけた」といったような課題も出てきていて、ゆくゆくは「建築をビルメンがやっている」というところが最終目標ですね。私たちがコンセプトデザインから官公庁遊休施設の総合プロデュースをして、「こういう施設をこう運営するためにこう改修しましょう」と言える状況を作り上げていきたいと思っています。

―― 仕掛け側に打って出るということでしょうか?

三瓶 そのとおりです。ビルメンテナンスという手段を使って「ただ清掃」「ただ設備管理」というビルメンテナンス業の世界から飛び出していく。その過程の中で企業として様々な事業にチャレンジしていけると考え、今まさに挑戦の最中にあります。

大きく描かれた「花」の文字(書道家の金澤翔子氏による作品)
紆余曲折あって偶然手に入れたものだそう。
その縁もあり、本社の落成式には金澤氏も出席されたとのこと。
2017年よりパートナーシップ契約を結んでいる「いわきFC」のユニフォーム。