社員の幸せと報われる職場環境づくりを
FILE 065
セイビ九州株式会社
代表取締役社長:森永 幸次郎
――― セイビ九州に入社されたきっかけを教えてください。
森永 入社のきっかけは父親からの誘いでした。父親が率直に「うちに入らないか」と誘ってきたのです。
とはいえ、そう言われても学生のころは「社会」というものがよくわからないじゃないですか。もう少し何か楽しみたいという思いもありましたので、最終的にセイビ九州に入社するという前提で、まずは社会を知るために別の会社に勤めることにしました。
―― 別の会社ですか?
森永 最初は資機材メーカーの株式会社リンレイに入社しました。リンレイでは約5年間、営業の仕事を経験しましたが、家庭製品の担当に配属され、ディスカウント店やDIYのショップセールスを担当していました。その後、リンレイを退職する直前に、当時の先輩に業務用製品に関する知識を深める機会をいただきました。
短期間ではありましたが、先輩に同行してお客さまのところを訪問する経験を積み、業務用製品についての理解を深めることができました。
―― 退職後はすぐセイビ九州に入社されたのでしょうか。
森永 建物の多い大都市圏で経験を積んではどうかかと周囲から助言をいただき、現場では設備管理や清掃の勉強をしました。初めに京都の銀行、神戸では六甲アイランドのファッションマート、その後は難波にあるホテル大阪で……と、さまざまな現場で仕事をしてきました。
―― さまざまな業務と現場を経験された後、セイビ九州に行かれるにあたって心境に変化はありましたか?
森永 さまざまな経験を通じて、大阪では現場責任者を務める機会も与えられました。その過程で、この業界で一生懸命に働く人々がなかなか報われない現状を痛感しました。そこで、将来的には自身が社長になり、「ビルメンテナンス業界の現場で働く人々が幸せになる社会を築く」という使命感を強く感じるようになりました。
―― セイビ九州に入社されてからの経緯を教えてください。
森永 まずは「営業企画室」に配属されました。入社した当初のセイビ九州には、男性が10人、事務の女性が3人いる程度で、営業部などの専門部署はなかったのですが、営業経験のあった私のために、新しく営業企画室が設立され、営業企画室長として業務を開始しました。ただし、面白いことに、営業企画室長とは言っても、部下は一人もいないという状況でした(笑)。
―― そういった状況でのスタートだったのですね。
森永 当時のビルメンテナンス業界では、営業活動はあまり盛んではなかったと思います。むしろ、既存のお客さまとの良好な関係を維持することが主で、言ってみればルートセールスのようなものでしょう。
それから新規営業を始め、最初に担当したのは、地元企業の定期清掃の仕事でした。もともとその工場の日常清掃を担当していたことから、縁があり、熊本に工場があるため、清掃の仕事をしてみないかという提案をいただいたんです。
―― 最初は何かご苦労はあったんでしょうか。
森永 入社してから約1年後、父親が脳梗塞で倒れたのです。その際、誰が会社を指導していくかという問題が浮上しました。当時の会長から、私に会社を指揮する役割を果たすよう言われました。そのような状況下で、自分の中では奮起して必死になっていたのですが、実際には盛り上がっていたのは私だけで、社員はあまりやる気を持っていなかったんです。社内から見れば、私は社長の子どもで、皆はこれまで現場で苦労してきた結果、会社を支えているという自負があったのかもしれません。突然社長になった私が「一緒に頑張りましょう」と提案しても、社員にうまく響かなかったんです。
―― 信頼を築くためにどのような努力をされたのですか?
森永 自己中心的な視点を捨て、現場のスタッフの視点に立つことが重要だと感じました。彼らは経験や実績を持っており、その視点を尊重することが経営にとって大切なことだと痛感しました。一緒に食事をする機会を増やすなどスタッフとのコミュニケーションを図り、交流を深めました。このような積極的な交流が信頼関係の構築に役立つと実感するとともに、当初の想いに加え、新たな決意を抱きました。
この業界において、スタッフが注目され、業界での活躍が評価される社会を築くべきだと強く感じたのです。また、ビルメンテナンスの仕事が社会にとって、非常に重要であるという認識から、この仕事の重要性を広める一環として、漫画などで情報を発信することも行っています。
―― 客室清掃を題材とした漫画などで業界の情報を発信されていると伺いましたが、反応はどうですか?
森永 幸いなことに、多くの方々から「見ましたよ」「素晴らしい業界ですね」といった声をいただいており、非常に嬉しいです。情報発信だけでなく社員教育でも「分かりやすい」「読みやすい」教材として役立ってくれています。今後は、客室清掃に留まらず、設備管理やビル総合管理など、新たな分野にも取り組んでいく予定です。
―― 他にはどのような取り組みをされているのでしょうか?
森永 教育・研修の面での取り組みになりますが、新入社員に向けて「みんなの約束」というムービーを制作しています。この約束の内容は、第一に「人が嫌がることはしない」、第二に「挨拶をする」、そして第三に「失敗やミスを報告する」です。誰しもミスはするもので、その際にはミスをカバーする方法を一緒に考えましょうという趣旨です。また、優れたアイディアがあれば積極的に提案してもらいたいという思いも込めています。
―― それは何がきっかけで始められた取り組みなのでしょうか?
森永 ある職場での経験から始まりました。その職場では多くの人が退職しており、その背後には人間関係の問題があることが明らかでした。そこで、人間関係の改善が必要だと感じ、面接の際に「みんなの約束」を導入し始めました。ビルメンテナンス業界においても、仕事の成果と人間関係の両面が大切であり、目標達成とチームワークの両方を実現することが最善だと考えています。
―― 両軸を大切にし、目標達成とチームワークの両方を追求する姿勢が素晴らしいですね。このような価値観は非常に重要ですね。
森永 ビルメンテナンス業界が健全に発展するためには大切だと考えています。私たちはこの理念を実現し、セイビ九州をさらに発展させていきたいと考えています。
―― 今後のビルメンテナンスの仕事にはどのような可能性があると考えていますか?
森永 現在、デジタル化やDXなどが注目されていますし、ロボット技術も進化しています。また、サステナビリティも今後の重要な課題です。電気自動車などの環境への配慮が進んでいますが、その裏には新たな課題も存在します。例えば、電気自動車用の充電ステーション整備などが必要です。私たちはこのような課題にも取り組み、社会に貢献していきたいと考えています。
そして、私はもう一つ大切な要素があると考えています。それは笑顔や心のこもった接客、そして清掃です。これらの要素は、過去から現在まで変わることなく大事な価値だと思います。例えば、かつて松下幸之助さんが語った「うどん屋の商売」の話があります。笑顔で歓迎し、美味しい食事を提供し、時間を守り、最後に深々とお辞儀をする。これらの要素が揃った店は繁盛すると言われています。このような基本的な価値観は、今も昔も変わりませんし、これからも変わらないと思います。ビルメンテナンス業界においても、これらの原点を大切にし、徹底的にこだわり続けたいと考えています。
―― それを実現するためにも、まず社員も幸せで笑顔でなくてはならないと。
森永 人間は幸福を追求しますし、個々の欲求や願望が異なります。私自身も幸福を追求し、周りの人々が幸せであることを願っています。私の名前にも「幸せ」という意味が込められていますが、自分自身が幸せであることと同時に、他の人々も幸せにしたいと考えています。これらを通じて、ビルメンテナンス業界が社会に貢献し、多くの人々に幸せをもたらすことを目指しています。
―― お客さまへのサービス提供と社会への貢献、そして社員の幸せが、ビルメンテナンス業界において重要な価値だとのお考えですね。
森永 私たちの会社の理念は「安全清潔快適な環境」を提供することです。これは私たちが持つべき価値であり、お客さまの幸福と社会の健全な発展に貢献することを目指しています。
Corporate Information
- 株式会社セイビ九州
- 〒812-0011 福岡市博多区博多駅前1丁目19番3号 博多小松ビル3F
- TEL:092-451-4313(代表)
- 代表取締役社長:森永 幸次郎
- 事業内容:ビル管理業務、警備業務、清掃業務、病院関係業務、ホテル運営業務ほか
- https://www.seibiq.co.jp/