オンリー(1人)から多くの人との繋がりが生まれた
FILE 068
株式会社オンリー
代表取締役 藤井 忍氏
――ビルメンテナンスの仕事をされたきっかけは何ですか?
藤井 両親が清掃業を行っていたので、生まれた時からワックスやポリッシャーに囲まれて生活をしていました。両親の仕事について行くこともあり、小学校2年生の時には、すでにポリッシャーを使えるようになっていました。
ただ、実は高校卒業後は27歳まで建築関係の仕事をしていました。友人の父親が経営する会社で、現場での掘削や大型トラックでの運送までなんでもこなしました。現場を任されるようにもなっていました。
その後、現在の会社オンリーを起業しました。子どものころから清掃をしていたので、何も違和感なく、この仕事を始めていました。
――会社の名前の由来は何ですか?
藤井 一人で始めたからオンリー、オンリーワンのオンリーです。
――ご両親の仕事を継がなかったのですか?
藤井 はい、一から起業しました。両親の会社には父親の兄弟が働いており、自分自身が継ぐことは当時、まったく考えてなかったです。
――オンリーを起業してからは順調でしたか?
藤井 はじめはしんどかったです。当時、母親の友人のご主人が京都マイショップというお店を20店舗経営しており、そこの夜間清掃を任されたのは幸運でしたが、夜間の仕事でもあり、大変でした。昼間に仕事がない時は、以前勤務していた建築会社で働いたこともありました。それが起業して2年間くらい続きました。
その後は同業他社から昼間の仕事をいただけるけるケースも増えてきましたが、夜間の清掃を続けていたことで、京都に夜専門の会社「オンリー」があるという噂が広まっていて、百貨店などの夜の仕事がさらに増えていって、24時間働くようになっていました(笑)。
また、建築関係の知り合いから紹介される仕事もありました。建物が立った後、その建物には清掃が必要になります。建築現場の監督が現場を引き払う際に、建物のオーナーや店舗の責任者に当社をご紹介いただき、仕事につながることで会社の基盤ができてきました。
建築の仕事は視野を広げてくれましたし、人との繋がりに感謝しています。
――人との繋がりから仕事に繋がることが多いですね。
藤井 はい、友達に本当に助けられました。ある時、コンビニで夜中の清掃をしていた時に、中学校の同級生に声を掛けられたことがありました。その同級生は不動産会社で働いていて、この再会がきっかけでマンションの巡回をやってほしいという依頼があり、最初に20件、さらには80件にまで増えました。本当に偶然ではありましたが。
――仕事が増えていく中で人材は集まりましたか?
藤井 給与を高くすることもできず、人材を集めるのは大変でした。長年働いてくれた2人には車1台と清掃道具を積んで渡し、独立させました。この2人は今では当社の仕事ではなく、自分自身でとってきた仕事をしています。本当に嬉しいことです。
――オンリーを起業された際、ご家族の協力は心強かったですね。
藤井 1人で起業はしたものの、奥さんが主に経理を担当してくれていました。清掃の経験はなかったものの、夜間の清掃を手伝ってくれたこともあります。夜中に夫婦2人で仕事に行く際は、3人の子どもが小さかったので本当に心配でした。大きな犬を飼ったりもしました。
今では次男が当社で働いており、現場を仕切ってくれています。長男も設備関連の会社を興しました。2人とも子どものころから野球をやっていて、甲子園に出場したことがあるんです。
――ご自身も野球はされますか?
藤井 草野球程度です。京都では阪神ファンが多いのですが、私はジャイアンツファンです。それもあり、会社のロゴやオフィスはジャイアンツカラーです(笑)。
オフィスもジャイアンツカラーで統一
――今後は会社をどうしていこうと思われますか?
藤井 今は厳しい状況です。売上を伸ばしていきたいと思いますが、人材確保がそもそも難しいです。求人を出しても残念ながら応募がありませんし。
日本語学校に通っているバングラディッシュ人にはアルバイトで働いてもらっています。本来なら技能実習生など外国人を採用していきたいと思っていますが、現状は入れられる現場がないのが残念です。
――コロナの影響はありましたか?
藤井 大学の日常清掃を受託しているのですが、その仕事が継続できていたので助かりました。コロナで外出自粛となった時期、生徒はまったく通って来ず、オンラインで授業をしていました。そんな中でも、学長から「普段できない場所の清掃をして欲しい」と言っていただき、ありがたかったです。その仕事があったので乗り切れました。
また除菌の依頼もあり、助かりました。関西、関東に美容室を展開する会社の社長と知り合い、そこに除菌剤を卸すこともありました。
――京都ビルメンテナンス協会の会長を長年されていますね。
藤井 現在、7年目になります。1期2年で終わる予定でしたが(笑)。
京都ビルメンテナンス協会には27歳の時から携わっており、協会の歴史を知るうちの1人です。最初は教育事業委員会でビルリーニングのインストラクターをしていました。そこからずっと協会に関わってきて、とんとん拍子に理事になっていきました。
現在はアビリンピックに力を入れています。京都は第1回からずっと入選を継続中です。昨年度からは近畿地区でアビリンピックに取り組んでおり、初めて大阪で合同練習会を行いました。近畿でワンツースリーを取れたらと思っています。
京都では支援学校と一緒に取り組んでいますが、高校野球と一緒だなと感じました。良い先生がいれば、スキルの高い生徒が出てくるということです。まずは先生に向けて指導者講習会を行うことで、生徒のレベルが一気に上がりました。
11月には「京しごと技能検定」というイベントを行っています。支援学校の生徒を大きな体育館に集めて、そこで掃除の等級を認定しています。障がいの重度や種類によって等級を定めており、生徒はより上の等級を目指して頑張っています。そこからアビリンピックに出る生徒もおり、良い流れができています。
また、会長としては会員を増やす取り組みを行っています。協会内にプロジェクトチームを作り、施策を考え、行動している状況です。特に青年部が盛り上げ、推進してくれているのは頼もしいです。新入会の会員は、協会事務局主催のハロウィンパーティーで紹介したりもしています。
京都ビルメンテナンス協会事務局主催ハロウィンパーティーの様子
――京都ビルメンテナンス協会で新たに取り組んでいることはありますか?
藤井 昨年から新年会で、1年間の行事を映像でオープニングとして流すことを始めました。協会で行っている事業をみんなに見て理解してもらっています。それを見れば、京都協会の取り組みのすべてを知ることができます。
オフィスの屋根 町家の守り神、鍾馗(しょうき)さん
Corporate Information
- 株式会社オンリー
- 〒612-0019 京都府京都市伏見区深草平田町26番地
- TEL:075-643-2903(代表)
- 代表取締役:藤井 忍氏
- https://kyoto-only.com/