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世界・全国に向け新たな事業を

2024/05/09 10:00

日本の侘び寂びを世界に

永田 「お客様の快適空間と笑顔を創造し、共に働く仲間と家族の幸せを追求する」を経営理念とし、ご家庭の清掃からビル、店舗の維持管理、インテリア・リフォームに到るまで、あらゆる業務を行っています。
もともとは祖父が米屋を営んでいたので、私が小学生の頃は将来はお米屋さんになるんだと思っていました。しかしこの先米屋は先細っていく、今後はビルメンテナンス業が社会で必要とされる仕事になると、父が1991年に「柳井ビル美装株式会社」という社名でビルメンテナンス業を始めました。それが「株式会社YBB」の創立です。

永田 平成から令和に元号が変わるとともに、社名を「柳井ビル美装株式会社」から「株式会社YBB」に変更しました。「柳井ビル美装株式会社」という社名は、“柳井市“で”清掃を行う“会社と、何をしている会社なのか分かりやすかったです。しかし裏を返せば、それだけしかできません。そのため清掃業以外にも“なんでもできる会社”となるように「株式会社YBB」へと社名を変更しました。

永田 和菓子や北海道山中牧場のこだわりのソフトクリームを販売している「一五一八(いちごいちえ)」の店舗運営を行っています。父も私も北海道の大学を出ていて、山口県にも北海道のおいしいものを届けたいというコンセプトでこのお店を始めました。
また、2年前に「Wabisabi.jp」という事業を立ち上げ、盆栽やメダカをECサイト(https://ybb-wabisabi.jp/)等で販売し、日本の文化を発信しています。
今までは清掃業に関連した事業を行っていましたが、これからは清掃業とは関連のない事業も行っていくことが会社を成長させていく上で重要だと考えています。

永田 世界では人気を高めているのに、母国の日本では衰退している侘び寂びに纏わる趣味や文化があります。例えば盆栽ですが、日本では高齢者の趣味というイメージが強いですが、海外では幅広い年代に人気があります。この桜の盆栽は、今は満開ですが、今の姿だけではなく満開の花が散り、葉桜となり、そして葉が散って冬の姿となり、四季折々の姿を楽しむことができます。そういった本来日本人が持っている多様で独特な美しさを楽しむことができる侘び寂びの感性を呼び覚まし、広めていくべきではないかと考え、この事業を始めました。
そしてこの事業を通して、世界の人々が侘び寂びの感性を持つことで、多様な姿を受け入れる、優しい世界に変えていければと考えています。

永田 そうなんです。私はもともと生き物が好きで、「愛玩動物飼養管理士」という資格を持っています。そういったことも「Wabisabi.jp」でメダカ取り扱う1つのきっかけとなりました。
メダカは飼育がしやすいことあり、今日本でとても人気が出ています。また、海外の富裕層の間では錦鯉が人気で、家に池と日本庭園を作り、そこで錦鯉を飼育しています。しかし、一般家庭で日本庭園を作って錦鯉を飼うようなことは難しいのが現状です。
そこで、メダカで鯉のような品種がいることに着目し、テーブルの上で小さな日本庭園を再現できる新商品「侘水景(わびすけ)」を開発しました。メダカをいかに錦鯉に近づけるかにこだわり、交配を行っています。 また、池についている盆栽は取り外しが可能で、秋になれば紅葉の盆栽に変える等、四季折々の姿を楽しめるようになっています。動物が好きな人は植物も好きという人が多いので、ここから衰退している盆栽にも興味を持ってもらえればいいなと考えています。

会社が勝ち残っていくために、外に目を向ける

永田 小学生の頃から、キャッチャー一筋で野球をやっていました。ピッチャーとコミュニケーションを取りつつ、一球一球の配球を考えたり、キャッチャーは常に全体を見渡したり、さまざまなことに気を配り、考える必要があります。しかし、バッターを三振に抑えても注目されるのはピッチャーで、キャッチャーは目立たない縁の下の力持ちのような守備位置です。その経験が経営者となった今、さまざまな場面で生きているので、野球を、キャッチャーをやってきてよかったなと思います。
このような経験からも自分の子ども達にも野球をしてほしい、しかし強制はしたくないという思いがあり、まずは野球を好きになってもらうために野球場に連れて行きました。野球場は野球関係なく楽しい場所ですので……そうしたら、子どもたちは完全に私の術中にはまって、今では野球が大好きですね(笑)。近年、少子化の影響で学校の部活動がどんどん無くなっていますが、子どもたちには野球を続けてほしいなと思ってます。


錦鯉が優雅に泳ぐ日本庭園をテーブル上でも再現できれば、そんな想いで生まれた新商品「侘水景(わびすけ)」

永田 柳井市は人口が約3万人、昨年生まれた新生児の数が80人と、人口減少がどんどん進んでいる町です。ただ、それは避けられないことだと思っています。その柳井市という小さな枠の中で、ビルメンテナンス業の競合他社から仕事を取り、シェアを広げるということは、会社を成長させることには繋がらないと考えています。
会社を成長させていくためには、外に目を向け、柳井市の外に出ていく必要があります。しかしながら、同業者同士で仕事を取り合うことがあまり好きではないので、ビルメンテナンス業以外の新しい事業を行っていきたいと考えています。

永田 当社では特定技能外国人の受け入れを行っているのですが、平均年齢が50歳ぐらいのビルメン業界に20、30代の外国人という新しい風が吹くことは、いいことだと考えています。当社でも彼らが入社した当初、朝礼でベトナム語の勉強を行う等、社内の雰囲気が変わり、受け入れを行ってよかったなと感じています。そのため、今後も特定技能外国人の方の受け入れを行っていきたいと考えています。
また、柳井市だけではなく日本全体も人口は減っていき、汚れのつかない建材やお掃除ロボット等の技術がどんどん進歩していくと思います。今後は、人手不足と技術の進歩が本当のライバルになると思います。その中で、どうやって生き残るか、勝ち残っていくかを考えることが重要だと考えています。
今後は、ビルメンテナンス業にとどまらず、地元の困っていることを探して、その問題が解決できる事業を行うこと、また「Wabisabi.jp」のように全国・世界に向けて新しい事業を行うこと、これら2つの事業をビルメンテナンス業に合わせ取り組むことで、会社を成長させていきたいと考えています。

終業後は従業員でお花見を行うとのことで、会社の周りには桜の盆栽や枝木が飾られていた。