2025年 年頭所感
新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
2025年は戦後80年となる節目の年です。日本のビルメンテナンス業は、戦後、連合国総司令部(GHQ)が接収した建築物の清掃を日本人が担ったことがその興りであり、1951年にサンフランシスコ講和条約が締結されGHQによる占領行政が終わりを迎えた戦後復興期に、契約によるビルメンテナンス業態が本格的に始まったと言われています。その後は高度成長に伴うアウトソーシング拡大の波に押される形で目覚ましい発展を遂げるわけですが、業の原点に思いを馳せるに相応しい年であろうと思います。
また2025年は、待ちに待った「日本国際博覧会(EXPO 2025大阪・関西万博)」の開催年でもあります。大阪での登録博の開催は2度目となりますが、前回1970年に開催された日本万国博覧会は全国協会が清掃業務を受注し、京阪神の3協会が中心となって全国から多くの仲間が参加して力を合わせ、この偉業を成し遂げました。さらに同年は念願であった「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)」が成立した年でもあり、日本のビルメンテナンスにとってターニングポイントであったことは間違いありません。
このような成長と発展の歴史をたどってきたビルメンテナンス業ですが、現在は外部環境の変化等によって厳しい経営環境にさらされています。特に労働人口の減少に伴う人手不足や、毎年約5%という急激な最低賃金の引き上げは、労働集約型産業であるビルメンテナンス業の事業継続に暗い影を落としています。事業者はロボット等を活用した生産性向上や外国人材の積極的な活用など課題の克服に努めていますが、客先の建物に出向いてサービスを提供するという業の特性上、課題の解決にはお客さまのご理解が欠かせません。
お客さまにご理解いただくためには、まずは社会環境の変化にビルメンテナンス事業者自らが対応し、同じく環境変化にさらされるお客さまにとっての「新たな顧客価値」を想像し、提供するしか方法はありません。例えばロボットや外国人材を活用するにも、単にこれまでの作業をそれらに置き換えて代替させるのではなく、ロボットや外国人材を活用することでしか生み出せない「顧客価値」を創造し、提供するということです。多様化の時代、すべての事業者に共通した「正解」はありません。それぞれの事業者が自社ならではの「強み」をもったサービスを創造し、提供することが求められています。
行動を起こさなければ課題は克服できません。行動を起こすには当然リスクが付きまといますが、この困難な時代、リスクを避けて生き残ることはできません。冒頭にご紹介した業の興りやのちの発展も、当時の先人たちが戦後の混乱のなか行動し、変化に対応し、全国の仲間が一致団結して挑戦し、努力を重ねることで実現したものであることに疑う余地はありません。80年前に思いを馳せながら、いまこそ2度目の業の興りに挑戦すべき時ではないでしょうか。
全国ビルメンテナンス協会は、時代の変化に適合したビルメンテナンスの実現に向けた情報やツールを提供して参ります。事業者におかれては協会事業を活用しながら自助努力し、それぞれが新たな顧客価値を創造して提供していただくこと、またお客さまにおかれては「新たな顧客価値」にぜひ、ご期待をいただければ幸甚に存じます。
公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会
会長 佐々木 浩二